【鎌倉FM 第86回】仕事を変える前に、暮らしを変えてみることの効能
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仕事を変える前に、暮らしを変えてみることの効能
東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪などで28ヶ所(2026年2月時点)ものシェアハウスを運営し、これまで1000人以上の人々と住まいを共にしてきた、「絆家シェアハウス」(株式会社絆人)代表の平岡雅史さんが今回のゲスト。2011年の東日本大震災後に会社員を辞め、以前から個人的な活動として仲間と取り組んできた「コミュニティづくり」や「人との深いつながりづくり」を事業の中核に据えて、シェアハウスで暮らした自らの経験を生かし創業しました。
皆さんは、シェアハウスに住んだことはあるでしょうか?
今では住まいの選択肢の一つとして、社会的にも一定の認知を獲得したシェアハウス。単身者を中心に、近年は子育て世帯や高齢者向け、多国籍、多拠点など多様なコンセプトを掲げたシェアハウスが出揃い、人気を集めています。
シェアハウスの魅力は、大きく二つあると思います。
一つ目は、引越しや住居コストの安さ。住むためのコスト(敷金・礼金、2年更新、家財購入費、家賃・光熱費など)が軽くなることで、心にゆとりが生まれます。「住まいのために無理して働かなくてもいい」という足枷の無さや、いつでも身一つで移れる身軽で自由な感覚は、シェアハウスの大きな魅力。充実した共用部と設備のおかげで、広いキッチンで気持ちよく料理ができたり、大きなソファで大画面のTVを見られたりと、暮らしの豊かさの体感がグレードアップするのも良い所。限られた個人スペースとシェアするライフスタイルが持ち物を「減らしていく」方向へと導き、本当に必要なものを見極められますし、その過程で「足るを知る」という知性も身につくのです。
二つ目の魅力はやはり「コミュニティ」。会社の同僚とも一人住まいとも違う、利害関係のない、かつ価値観の似通った人間的な温かいつながりの中で暮らす心地よさは、シェアハウスならではの恩恵です。もしもの時の頼れる仲間という安心感と共に、干渉しすぎない適度な距離感や節度を持って付き合えるのも、肉親の家族とは異なる「拡張家族」たるシェアハウスの住民だからこそ。多様な背景を持つ人々と、「生活」という、自分の体や心からダイレクトにつながる本能的にごまかしの効かない領域を共有することで、会社と家、パソコン画面と自分の部屋の行き来だけでは広がらない世界が3rdプレイス的に広がっていく所に、シェアハウスに暮らす醍醐味があると言えるでしょう。
つまるところシェアハウスは、心のゆとりと安心感の中で視野が広がり、新しい価値観や可能性に目を向けられる自分になれる場所であり、多様な「他者という鏡」に映すことで自分自身を知り、「自分軸」を太く育てられる場所だと思うのです。仕事を変える前に、暮らしを変えてみることで、自分も周りも思い込んでいる「私とはこういうもの」という固定的な連続性から解放されて、新しい自分自身を開いていけるのではないでしょうか。そうすることで、頭で小賢しく考えるのとは違う所から、予想だにしていなかった興味や意欲が湧き起こってくるかもしれません。あるいは、あなたの眼差しが変わることで、現在の職場環境やお仕事が違って見えてくるかもしれません。
そしてシェアハウスで自分と出会い直し、育て直した後には、そこを卒業していく日も来て然り。いわば「暮らしの学校」のような場所。自分の人生を主体的に生きることや、人間関係を育むこと、社会の中に適切に自分を位置付けることのリスキリングができるのが、シェアハウスなのではないかと思います。
平岡さんにとっての「働く」とは「自己表現」だそうです。
結婚や子育てなど自身のライフステージの変遷に呼応して、つくり出すシェアハウスの形も変化してきたとのこと。自らの生活の延長上に、同じ価値観を持つ人々を包摂しながら暮らし、それがそのまま仕事になっているのが平岡さんのワーク&ライフスタイル。「私」のニーズから始まった呼びかけに、「みんな」が応え、その求めにまた自分がより良いものを返していくという、幸せなコール&レスポンスの循環の中に生きています。
そんな平岡さんの次なる目標は「多世代共生型シェア団地」。それは赤ちゃんから高齢者までが、互いに認め合い、助け合いながら安心して豊かな暮らしを共に営む、再構築された共同体(むら)の形。未来の社会のプロトタイプともなり得るものです。平岡さんの「暮らす」から始まる「働く」は、個人の生き方も、社会の在り方もすこやかに変えていく素敵なムーブメントを生み出しつつあるようです。
(角 舞子)
今回のゲスト

平岡 雅史(ひらおか まさし)さん
絆家シェアハウス 代表
1982年生まれ、岐阜県出身。
大学卒業後、インテリア雑貨メーカーにて5年間勤務。会社員の傍らでイベントカフェ運営などを手がけ、人と人とが繋がる場づくりの魅力に目覚める。
2011年に独立し、シェアハウス事業をスタート。
「効率よりも、温度の上がる暮らしを社会に」を理念に掲げ、現在は東京・千葉・神奈川・大阪を中心に、全国28棟のコミュニティ型「絆家シェアハウス」を展開する。
自身も「まーしー」のニックネームで親しまれ、妻と子どもと共に100人規模の国際交流型シェアハウスに居住。
多世代・多家族が共に子育てを分かち合う、新しいライフスタイルを自ら体現・発信し続けている。




