【鎌倉FM 第85回】次のキャリアを「人」で選んでみる
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次のキャリアを「人」で選んでみる
会社員を辞め、2022年秋にご自宅の一角で4畳半の小さなワインショップ「日本ワイン店じゃん・鎌倉」を開いた所から始まった、今回のゲスト 加藤曜子さんの第2のキャリア。2025年11月には、藤沢で2店舗目となる「じゃん商店・藤沢」をオープンし、両店を支えてくれるスタッフにも恵まれ、現在は加藤さん自ら各地のワイナリーや農家を積極的に訪ね、つくり手の想いや努力、創意工夫などを吸い上げて、お店を“媒体”に多くの人に伝える活動を行っています。
その根底にあるのは、幼い頃に祖母と触れ合った和歌山県の田舎での思い出だそうです。命と文化を支える農を中心に、脈々と「日本」をつないできた営みと田園風景が、加速するグローバリズム、後継者不足、災害の多発などにより荒れ果てていくことにたまらない思いを抱えていた加藤さん。運命的に「ワイン」に出会い、この景色を子どもの代にも持続させたいと、「残したい未来をつくっている人たちの生き様とその生産物を届ける」ことが “使命”となりました。
加藤さんは「境目をなくしていく」をコンセプトに、店内に大きなダイニングテーブルを設置し、スタッフとお客さんとの境目はもちろん、お客さん同士やつくり手との壁を取り払う店づくりを実践しています。ワインを真ん中に人と地域、課題とアクションがボーダレスにつながり合っていくことで、互いを大切にしながら皆で新しい未来をつくっていこうとする確かな“渦”が生まれ始めています。『すべては一人から始まる』とは、次世代のリーダーたちに厚く支持されるトム・ニクソンの名著ですが、自ら熱源となる覚悟を決めて行動したからこそ、加藤さんの周りには共感するスタッフや顧客、応援者が自然と集まり、加藤さんをさらなる最前線へと向かわせてくれるのでしょう。
ここで私たちには2つの道があることに気づかされます。一つは、「自分自身も新たな熱源になる」という選択。そしてもう一つが、「熱源となる人を支える」という選択です。あなたが自分の生命をより心地よく燃やせるのはどちらでしょうか?
加藤さんのお話から分かるのは、どちらか一方の人だけでは、例えば「残したい日本の田園風景や営みを守る」というような大きなビジョンの実現は難しいということ。アフリカの諺にある通り、「早く行きたいなら一人で行け。遠くまで行きたいなら仲間と行け」。個人では見ることのできない景色を見るために、仲間が必要なのです。それも打算ではなく、熱源となる情熱の火を守り、絶やさないで灯し続けようとする「想い」でつながる仲間が。
都心から地方に移住した知人のパン職人が、移住した理由は、とある「人」だと言っていました。学びたい人を見つけた、その人が移住してパンを焼くというから、自分もそこへ行くのだと。惚れ込んだらいつも、知人は「人」を追いかけて職場を変えます。その人の考え方や行動、見ている世界、選ぶもの、切り拓いていく未来…全てが気になり居ても立ってもいられないのだと。人を追いかけて行った結果、自分の世界がぐんと広がり、新たなスキルも身につき、思ってもみなかった場所にいつの間にか立っている。それを楽しむことが知人の生き方のようです。
世の中、全ての人が「熱源」にならなくてもいいと思うのです。熱源になれる人というのは、自家発電できる大きなエネルギー源とその出口に巡り会えている。それは生まれつき与えられる場合もあるでしょうし、加藤さんのように人生のどこかで運命の扉が開くこともあるでしょう。今のあなたがそうではないとしたら、かつ、今のままでは停滞している気がするのなら、次のキャリアを「ついていきたい人」で選んでみるのも一つの道ではないかと思います。誰かを支える、仲間を守るというのも、大切な仕事。熱源となる人が、あなたの「熱源」かもしれませんし、その人と行く先で見る景色が、あなたの「熱源」になるかもしれません。
(角 舞子)
今回のゲスト

加藤 曜子(かとう ようこ)さん
日本ワイン店 じゃん・鎌倉/じゃん商店・藤沢 オーナー
富士フイルム株式会社で営業・マーケティングに10年従事後、退職。
2022年秋、自宅の一角に4畳半の小さなワインショップ「日本ワイン店じゃん・鎌倉」を開いたことから第2のキャリアをスタート。
2025年11月には藤沢に2店舗目「じゃん商店」をオープン。
和歌山の農家にルーツを持ち、“里山の文化”への想いを背景に、日本ワインの魅力を伝えている。
鎌倉在住、2児の母。






