【鎌倉FM 第61回】新しい時代の「働く」の前提とは?

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& Column
新しい時代の「働く」の前提とは?

「“働く”とは、ただ、働くだけのこと。自分の人生の一つの活動、一つの時間にすぎないし、そんなに大したことじゃない」

25歳の岸本直樹さん(TEFUDA代表/デザイナー)のこの在り方から、時代が完全に変わった、ということを感じずにはいられません。透明だから染まらず、柔軟だから折れない。軽くニュートラルであることの、柳に風の無敵ぶりがなんとも清々しい。今まで私たちは、仕事に使命感やアイデンティティ、自己の存在意義、勝負といった、あまりに重すぎる何かを不必要にくっつけていたのかもしれません。もはやそれらは完全に「気のせいだった」という気がします。

昭和の敗戦後、次は経済における戦争に勝つためにつくり上げられた、優良規格の人間を量産するための社会システム。経済成長時代はとっくに終わったにも関わらず、最近まで続けられてきたヒエラルキー型のその強力な仕組みは、フリーでフラットな新しい時代へと急速に移行する中、至る所で不適合を起こし崩壊しつつあります。日本のGDPが世界4位に転落したとのニュースが取り上げられていますが、その物差しが幸せや豊かさの実感指数でないことはすでに多くの人々の知る所となりました。

まず私たち誰もが「生きることを楽しむ」生来の権利があり、仕事はしてもいいし、しなくてもいい。しかし仕事をすることで得られるものや実現できることがあるから仕事をする。どんな仕事をしたいかの前に、どんなふうに生きたいか。どんな会社で働くかより、誰とどう働くか。共感や感覚でつながり、自分のできることと人のできることを組み合わせて、誰かを助けたり、社会の役に立っていく。ストレスを感じるなら、自分か、環境か、やり方をチューニングして、より良く心地よい状態へ整えていく。頑張らず、感情に飲まれず、思考にも捉われずにただ在り、ただ働く。この軽やかさがこれからの「生きる・働く」の前提のようです。

そんなことで達成感や生きがいや成長や名誉は得られるのか? と前時代の怒号が聞こえてきそうですが、彼らは淡々と見えて1日とて同じではない日々の微細な進化や変化を、その精妙なバイブスで大きな喜びと共にたっぷりと感じることができるように、すでにデザインされた新しい人間なのだと思います。これまでの何かを否定することも、排除することも、諦めることもなく、身の周りにこぼれた課題を優しく掬い上げ、芯を外さずしなやかにクリエイティブな一打を打ち込む。新しい時代のリーダーとは、そんな姿をしているのかもしれません。

岸本さんに比べて、私は重たい。そう感じたなら、生き方や仕事を掘り下げる前に、ニュートラルポジションを目指してまずはどんどん外していきましょう。いつの間にかガッチリ背負ってしまった、無駄な鎧や武器や十字架の数々を。(森田マイコ)

今回のゲスト

岸本 直樹(きしもと なおき)さん

TEFUDA代表/デザイナー

1998年、東京都青梅市生まれ。
鎌倉市在住。
青山学院大学経済学部卒業後、映像制作の太陽企画株式会社へ就職。
その後株式会社TranSeを経て、2022年1月よりフリーのクリエイティブディレクターとしての活動を開始。
サーフィンライフを満喫しながら、現在はクリエイターチームTEFUDAの代表として、ブランディングや経営支援を行う。

ナビゲーター

(左)小室 慶介/(中央)こまつあかり/(右)河野 竜二

こまつあかり
岩手県出身、鎌倉在住。
ナローキャスター/ローカルコーディネーター
地域のなかにあるあらゆる声を必要な人に伝え、多様なチカラを重ね合わせながら、居心地の良い「ことづくり」をしている。
Instagram @komatsu.akari
@kamakura_coworking_house @fukasawa.ichibi @moshikama.fm828 @shigototen
湘南WorK.の冠番組である鎌倉FM「湘南LIFE&WORK」のパーソナリティを務め「湘南での豊かな暮らしと働き方」をテーマに発信。多様性を大切にした働き方、それが当たり前の社会になること。その実現へ向けて共創中。

小室 慶介(こむろ けいすけ) 
湘南鵠沼育ち、現在は辻堂在住(辻堂海浜公園の近く)。
長く東京へ通勤するスタイルでサラリーマンを経験。大手スポーツ関連サービス企業にて、事業戦略を中心に異業種とのアライアンススキーム構築を重ねるものの「通勤電車って時間の無駄だよな」という想いがある日爆発し、35歳で独立。幼い頃から「自分のスタイルを持った湘南の大人たち」に触れて育った影響か、自分自身で人生をグリップするしなやかな生き方・働き方を模索し始め「湘南WorK.」を立ち上げる。相談者が大切にしていることを引き出しながら、妥協のないお仕事探しに伴走するキャリアコンサルタント。

河野 竜二(こうの りゅうじ) 
神奈川県出身、湘南在住。
教育業界10年間のキャリアで約2,000人の就職支援に関わり、独立。キャリアコンサルタントとして活動する。それと同時に、”大人のヨリミチ提案”がコンセプトの企画団体「LIFE DESIGN VILLAGE」のプロデュースや、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局など多岐にわたって活動する。湘南が誇るパラレルワーカー。

この記事を書いた人

文筆家。2007年~2018年まで鎌倉に暮らし、湘南エリアの人々と広く交流。
現在は軽井沢に住み、新しい働き方・暮らし方を自ら探求しつつ、サステナビリティやウェルビーイングの分野を中心に執筆活動を行っている。

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