今回のゲストは、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの前田千草さんです。みなさんは「ゴルフ場」に行ったことはありますか? 美しく整備された広大な土地、洗練された空間は、誰のためのものなのでしょう。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン、通称GDOは、ゴルフ関連のオンラインサービスを行う業界屈指の企業。そのGDOが、はじめてゴルフ場という「場」の運営に乗り出しました。最大の特徴は、ゴルフ場を、ゴルフをするだけではなく「地域のプラットフォーム」として活用するということ。いったいどんなことが行われているのでしょうか? そしてゴルフがもたらすライフスタイルの可能性とは?
退職を機に東京からハワイ、帰国して茅ヶ崎へ
ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)で13年働いていて、結婚して28年くらいになるのですが、子どもがいないので、夫婦2人でこの先どうやって暮らしていこうかという話をした時に、もともと知り合いだったGDOのOBが起業していて、その彼からハワイでゴルフのフィッティングスタジオみたいなものをやりたいという夢を聞き、だったら夫婦で行こうかなって。
とはいえ、会社にも13年もお世話になっているので相談したところ、「やりたいことがあるのであれば応援するよ」と言っていただき、2019年の夏に退職して、一昨年ぐらいからハワイと日本を行ったり来たりして、お店をオープンするところまではやって、その頃にコロナが始まったんですよね。
なるほど。
じゃあ、やっぱり日本でもう一回やろうかと言っている時に、GDOの昔の同僚に、いつもその人たちに助けてもらっているんですけど、「日本に帰ってくるなら、GDOに帰ってくればいいじゃん」と言っていただいて。
きっかけは主人が葉山に遊びに来た時に、海越しに見える富士山に感動して、1ヶ月後に引っ越してしまったんです。葉山がどういうところかも私は分からずに。「海がある」っていうぐらいの認識で。
そうなんですよ。それで、ハワイに行くにあたって家も全部処分してしまっていたので、住む所もない状態だったんですが、ちょうどそのタイミングでGDOがこの茅ヶ崎のゴルフ場を頑張っていこうという時だったので、だったらもう茅ヶ崎にそのまま行けばいいじゃないって言われてやってきました。
すごいタイミング。
今は自転車通勤なんですか?
そう、人生初のチャリ通です。
東京→ハワイ→茅ヶ崎にたどり着いた。
はい。私は「葉山アイス」という、棚田のお米を使ったアイスをつくっています。
そうです。大阪出身で海が近い所に住んだことなはかったですけど、数ヶ月間行ったり来たりしていたハワイの経験があるから、茅ヶ崎にあまり違和感がないですね。
確かにね、いきなり湘南に来るより。
なんとなくしっくりくるよねって。ずっと東京で暮らそうとも思っていなかったので、あのワンクッションはいろんな意味で良かったねって夫ともよく話してるんです。
茅ヶ崎ライフはどのくらいになりますか?
1年弱くらいですね。ゴルフに関わると朝が早いので、完全に朝方になるのに何ヶ月かかかったんですが。茅ヶ崎の人ってみんなめちゃくちゃ朝が早くて、夜も早いんですよね。だから家の周りもすごく静かですし、朝はみなさんボードとか、走っている方とか、犬の散歩とか、私たちの今の生活のリズムに街のリズムがとても合っている。そういう意味で言うと、なじんでいるのかもしれないですね(笑)
面白いですよね、海が好き!湘南が好き!ってことで引っ越してきたわけじゃないレアなケース。
同僚でも本当に海が好きで、茅ヶ崎や藤沢に引っ越してくる方は何人も周りにいるんですけど、私たちはそうじゃなかったっていう(笑)
そうじゃないのに、でもハワイや茅ヶ崎を選択するという。なんかご縁があるのかもしれないですね。
ゴルフをもっと気軽に、カジュアルに
なんかもう家族みたいですね、GDOって。
復職率は高いかもしれない。3回戻って来た人いますよね。
います。
2回目ぐらいから、もう気づかない。
「やめたんだっけ?」みたいな(笑)
私も最初にこっそり帰ってきて、社長には辞める時にごあいさつして以来、2年ぶりぐらいに会った時に、最初の一言が「お帰りなさい」って言ってくれたんですよ。ニヤッて笑ってましたけど。内心「早いな」と思ってたんじゃないかな(笑)。あれだけ盛大に送別会したよな、みたいな。まあ、それは言わずに「お帰りなさい」でしたけど。
そう言われるのは全員じゃないと思いますよ、やっぱり前田さんのお人柄や実績が大きいのかなと思います。
だから、これは何らかの形で会社にお返ししないといけないなって思っています。
そんな株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)ですけども、どんなことをやられている会社なのか、ご紹介いただけますか?
「ゴルフと言えば、ゴルフダイジェスト・オンラインだよね」という所を目指していて、今年で創業21年になる会社です。社長が「インターネットを通じてゴルフに革命を起こしたい!」と思って設立した会社で、最初にニュースメディアと、ECと、ゴルフ場の予約機能を3本柱で走らせて、今はそこにレッスン授業も入って4つの柱になっています。すべてゴルフにまつわる事業です。ゴルファーがそこに行けば、自分の欲しいものがワンストップでなんでもあるよという、ポータルサイトを運営している会社です。
先進的でしたよね、きっと。2000年のあの時代を考えると、まだまだインターネットを介して何かっていうのがあまりなかった時代なんじゃないかと。
はい。そういう会社が、初めてゴルフ場運営にチャレンジしたのが2020年ですね。
GDOさんがゴルフ業界を変えた2000年から昨今までの功績は大きくて、ゴルフが本当に一般の方も気楽にプレイできたり、楽しめるようになった一つの要因かなと思います。
地域の小学生にゴルフ場を開放
昨年からの1年間でいろいろなことを実はやっていまして、例えばうちのゴルフ場の3番ホールの隣りが浜須賀小学校で、校長先生とうちのゼネラルマネジャーがお話をする機会があった時に、6年生の行事がコロナの影響で何もできなかったということを聞いてきて、「じゃあ、うちで何かできないかな、こんなに近くなのに」ということで、うちの茅ヶ崎のメンバーや本社のブランディングのメンバーで話しまして、半日その6年生にゴルフ場を開放して、スペシャルデーということでいろんなコンテンツを提供しました。
子どもたちは、ゴルフはもちろんやったことがないし、ゴルフ場に来たこともない子がほとんどでしたが、半日楽しんでもらえるようなイベントをやって、それを全て動画で撮影して、そのDVDを6年生にプレゼントしました。すごく楽しんでくれている姿を見て私たちも元気をもらいましたし、これは取り組みというよりは生まれてきた感じですかね、やろうと思ってやったというよりは。
地域の方々と連携している中で自然と。
そうですね、お話している中で、何かできることはないだろうかということで。去年は夜に1回ナイトピクニックもやりました。ゴルフ場に来たことがない方もたくさんいらっしゃるので、交流するイベントでスナッグゴルフ的なものにちょっと触れていただいたり。親子で来ていただけるイベントも開催しています。ゴルファーだけではなく、それ以外の人たちにもゴルフ場に来てもらうきっかけにもなりますし。
人生をより豊かに。ゴルフだけではないゴルフ場の活用
長くポータルサイトを運営してきて、これまではリアルなゴルフ場からはかけ離れた所で「場」を回していく役割を担ってきていたわけじゃないですか。そこから、「やっぱり場だね」というふうになっているきっかけは、何かあるんですか?
それは、新しいことにチャレンジしたくても「いいね」って賛同してくれて、実際にやろうって協力してくれるゴルフ場がまだまだ少なくて、「自分たちがやりたいことができる場所があったらいいね」っていう声が、数年前から社内でも大きくなってきていた時に、ちょうどタイミングよくこのゴルフ場の運営に関する公募があり、手を挙げさせていただいたという感じです。
なるほど、初めはゴルフ場としてここをどう活用しようか、というイメージで捉えたんですが、前田さんたちがトライしてきたことをお聞きしていると、ゴルフに関係することだけではない「場」の活用の仕方にも目が向いてるような気がします。いかがですか?
おっしゃる通りで、ゴルフ場はゴルファーだけの場所ではないですし、「豊かな人生を送れるようにGDOが何をサポートできるのか」という考え方に、会社も少しずつ変わってきていると思うんですね、ここ数年。だからゴルフだけではないよっていうのは、会社のメッセージとしてあるのかなと感じていて、ゴルファーの裾野を広げていきたい方向性もありつつ、多様な形でアクションしているという感じです。
豊かな人生に向けての、一つのきっかけであるということですね、ゴルフが。
そうですね。
こういう空間て、他にないですよね。グリーンが豊かで、垣根もなくのびのびとできる場所って。今やギュウギュウの日本国内を見渡すと、ゴルフ場が持つポテンシャルって高いですよね!
「生きる楽しさ」とか「遊ぶ楽しさ」みたいなことを、もっと追求した方が幸せに生きれらるんじゃないか、みたいなメッセージがGDOさんの中にあって、それを今ここで表現されているのかなっていう感じがします。
ゴルフのある生活がもたらすもの
暮らしのお話を伺いたいのです。前田さんは今、自転車通勤していらっしゃるとお聞きしましたが、出勤日の1日のタイムスケジュールはどんな感じになるんですか?
今日はたまたまいちばん早い出勤が私で、鍵を開ける日だったんですね。その場合は朝の4時半に起きます。
東京時代は寝る時間ですよね。
逆転しすぎ(笑)
飲んで帰って4時半に寝る。
そう、それで2時間寝て仕事に行くっていう。
でもリアルにそうなんですよね、きっと(笑)
数年前までは本当にそういう生活でした。今は考えられないですよね。4時半に起きて、5時40分ぐらいに家を出て、ゴルフ場まで自転車で5分くらいです。
すごい近い!
はい。で、鍵を開けて、いろんな準備をして、ゴルフ場が開くのが6
時半です。それで7時ぐらいからみなさんがラウンドされます。
健康的ですね〜!
なので、最近は21時以降の番組は録画でしか見たことがないですね(笑)ぐっすり寝られますよ、それで朝は本当に鳥の声で目が覚めるという感じのライフスタイルになってます。
お仕事終わりはどんな感じなんですか?
本来は早く来た人は、できたら16時ぐらいまでには帰ってくださいという感じです。その時々で仕事があれば少し遅くなりますけど。でも17時には家に着いてますね。
健やか!
17時半にはもうお風呂上りで、プシュッてお酒を飲んでる。
もちろんです(笑)
理想じゃないですか!
そうですね、そんなタイムスケジュールで動く日が来るなんて、ちょっと想像してなかったですね。
夜型から朝方に。
自然のリズムに合わせて暮らすというのは本来人間のあるべき姿であって、それがたぶんいちばん体にもフィットするはずなんですよね、きっと。鳥のさえずりで目を覚まして、日が沈んだら眠ると。これ、いちばんだと思いますよ。
身をもって。
でもゴルフをやるっていうのは、そういうライフスタイル、リズムに合わせていくアプローチの一つでもあるんですね。
そうですね、茅ヶ崎の場合は、このコースの特徴なんですけど、9ホールしかないのでサクッと回れる。ゴルフってやっぱり1日がかりというイメージがありますよね。朝早く起きて、車を2時間運転して現地に着いて、18ホールやって帰ってきて、もう夕方。だから1日使っちゃうんですけど、茅ヶ崎の場合は1日の時間を有効に使えて、今日やりたい好きなことの一つにゴルフがあればいい、という考え方でできますよね。
なるほど〜。茅ヶ崎の暮らしが好きな方は、朝イチでサッと波に乗って、その後に仕事に入る…みたいなワーク&ライフのイメージがあるんですけど、その中の一つとして、サッとゴルフやって、帰って仕事するというスタイルが今後メジャーになっていきそうな気がしますよね。
それが本当のゴルフライフかもしれないですね。
そのぐらいカジュアルなものでいいと。
そうなんです。「日本一カジュアルでフレキシブルなゴルフ場を目指す」と、うちの社長が常に言っております。
家族と一緒に来てもいいし、愛するペットを連れて行ってもいいし。
いや、本当になかなかないんですよ、全国でも。
確かに距離を考えても、コンセプト考えても、なかなかそういう場所ってないでしょう。
GDOさんだからこそできることなのかもしれないですよね。
そうですよね、きっとそれまでいろんな場に関わっていらっしゃって、需要を熟知してきたからこそ、自分たちが今度これをつくるんだという。
そうですね、今までやりたかったけど、ゴルフ場でこんなことをしたかったけど、できなかった経験もたくさんあるので。それを逆に今後どんどんやっていけるように、協力できるようにしたいなと思っています。
健康であることの上に生きているってことに、みんな気づいていると思うんですよね。そんな中で、「ゴルフのある暮らし」というのが「健康に生きていく」ということの選択肢の一つになるとすれば、このGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスという「場」は、すごく貴重なものなんだろうなって思いました。
ありがとうございます。
*収録場所:GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス https://chigasaki.golfdigest.co.jp/
神奈川県茅ヶ崎市菱沼海岸9-38
今回のゲスト
前田千草(まえだちぐさ)さん
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)勤務。2020年からGDO初の運営ゴルフ場となる茅ヶ崎の「GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス」の運営に携わるのを機に茅ヶ崎へ移住。深夜まで活動して朝に寝る東京時代のライフスタイルから、5時前に起きて自転車通勤をするヘルシーな暮らしへシフト。ゴルフ場を地域に開放し交流の場を創出するなど、ゴルフを通じた新たな豊かさへの可能性へ挑戦中。
ゴルフダイジェスト・オンライン https://www.golfdigest.co.jp/