【鎌倉FM 第27回】いい未来をつくるための投資とは?

今回のゲストは、鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸(かまたやすゆき)さんです。みなさんは投資についてどんなイメージがありますか? 新型コロナウィルス感染症による最初の緊急事態宣言から約1年、改めて「お金」との向き合い方を考え直した方も多いのではないでしょうか。経済とはそもそも何のためにあるのか? 私たち一人ひとりの生活に「幸せ」をもたらす経済のあり方とは?

目次

投資は優れた企業や人の考え方・生き方を学ぶ良い機会

小松

私、恥ずかしながら、今日、鎌田さんにお会いできるということで、初めて投資について学びました。

鎌田さん

それは素晴らしい!

小松

本当に初心者向けの本とYouTubeで頭に叩き込んできましたけど(笑)。なんで私はこれを今、知ったのかと。

鎌田さん

ねえ、早くやっていただけると。

小松

なんで学校でこれを教えないんだ?!って。

河野

お金のことをね。

小松

本当にそこが素朴な疑問です。

鎌田さん

こないだも老後資金2000万円問題で大騒ぎになったりしましたが、お金を増やしていくとか投資ということに関して、あまり良いイメージがないのかもしれません。世の中でニュースになるのはだいたい「投資でだまされた」みたいな話ばかりで(笑)。まず一般的にみなさんの経験値が少ないということはあるとは思いますが、最近は、若い方々は投資にとても熱心です。ある意味では将来に対する備えということもあるかもしれませんが、鎌倉投信の場合は、投資を通じてとても良い学びの機会にもなります。経済、社会、いろいろな人や企業の考え方、生き方などをものすごく吸収できますので、そういう観点でお金や資産運用に向き合うと非常に楽しい。そんなこともあって、早くから関わった方が良いと思いますね。

小松

本当に! あと2年くらい早く鎌田さんと出会えていたら!(笑)

鎌田さん

でも投資に「遅い」ということはないので。今からでも全然遅くないですよ。

社会の質を高める「いい会社」へ投資する

小松

鎌田さんのご経歴というか、プロフィールを教えていただいてもよろしいですか?

鎌田さん

私は島根県の大田市という田舎で生まれ育ち、大学から東京に出て、社会人のスタートが日系の信託銀行でした。そこで証券部門、資産運用に関わるような部署に配属された流れでずっと投資の世界に身を置き、今に至っています。一通りいろいろなことを経験させていただいて、2008年1月に前の会社を辞め、何か本当に社会の役に立つ金融の形ってできないのかなとかつての同僚たちと一緒に半年くらい議論し、今の鎌倉投信の事業コンセプトが固まったので、2008年11月に鎌倉投信株式会社を設立しました。実際に営業を始めたのが2010年ですので、それから約11年くらい、この鎌倉の地で仕事をさせていただいています。

小松

ありがとうございます。鎌倉投信株式会社はどんな会社なんですか?

鎌田さん

ひとことで言うと、「投資信託の運用と販売をやっている会社」なんですね。投資信託についてなじみがない方もたくさんいらっしゃると思いますので簡単に説明しますと、個人・法人区別なく、年齢も国籍も問わず、いろんなお客様からお金をお預かりして一つの資金にまとめ、そこからそれぞれの運用商品の考え方によって、例えば株式や不動産や債券などにお客様のお金を投資して増やしていくという資産運用の器のことを「投資信託」といいます。

投資信託という枠組みそのものは一般的なものですが、鎌倉投信の独自性でいうと、お客様のお金を何でもいいから、どこでもいいから投資をして、ただお金儲けをするということではなく、本当に社会の質を高めていくような「いい会社」に厳選して投資をするというのがいちばんの特徴です。

もう一つは、投資信託や株式、債券などの有価証券は、一般的には証券会社や銀行などで購入することが多いのですが、私たちは直接販売といって、野菜でたとえるなら「産直」なんですね。商品をつくっている鎌倉投信が直接お客様に販売するというやり方をしているのも特徴です。

つまり、「いい会社選び」と「直接お客様と対話して販売させていただいている」という点が大きな特徴だと思います。言ってみれば、品揃えの数は少ないんだけど、自分たちがつくっている「結い 2101」という投資信託に関しては、これはもう何でも詳しくお話しすることができますので、自信を持って提供できます、という感じですね。

「いい会社」とは、本業を通じて社会に貢献する会社

小松

なるほど。この「結い 2101」について、詳しく聞かせていただけますか?

鎌田さん

投資信託って商品名がつくんですね。鎌倉投信が運用・販売しているのは「結い 2101」という商品です。「結い」というのは、みんなで力を合わせる「結・講」などの「結い」。そして「2101」というのは次の世紀の初年、2101年につながる価値を、たくさんの人と共につくっていきたいという想いを込めた名前です。次の世紀につながる価値、子の代、孫の代により良い価値をつくっていくためにどうすればいいのかと考えると、日本にはやはり「いい会社」がたくさんあるので、そういう会社を応援したり、さまざまな個人のお客様に知っていただいたりということを活動の中心にしています。

小松

鎌田さんの思う「いい会社」って何ですか?

鎌田さん

「結い 2101」の定義では、「本業を通じて社会に貢献する会社」です。当たり前ですよね。会社というのは、いろいろな人たちが関わりを持ちます。社員、社員の家族、取引先、地域の方々、お客様、株主…などたくさんいるわけですが、誰かの犠牲の上に会社だけが儲かっているというのは当然持続的ではないし、世の中が幸せになるわけではない。ですので、一つは会社に関わる人たちが、なるべく喜びや幸せを感じることができるような会社が増えた方が良い。

それと、もう一つ広い側面で言うと、日本はひと通りモノ・サービスは行き渡っているんですが、社会的な課題がたくさんあります。環境や財政、医療、教育、地域経済の問題など、さまざまな社会課題があるので、これを放置したまま私たちの将来が豊かになるというのは、なかなか描きづらいことですよね。ですので、モノ・サービスを増やしていくというよりも、社会の質を高めていくような性質を持っている会社を見つけて、応援していきたいと思うんです。

もう少し評価の軸で話をすると、鎌倉投信では「人」「共生」「匠」という3つのキーワードで表現しているのですが、人の強みを活かす会社、循環型社会をつくる会社、独自の技術・サービスを持っている会社という視点で、日本全国、現地にお邪魔して、社長さんや社員さん、場合によっては取引先さんにお会いしたりして、その会社が謳っていることとやっていることに本当にブレがないかなども見ながら、投資先を見つけてくるということをしています。

そして、原則的に一度投資をしたら、その後、保有し続けることにしています。株価が高くなったからとか、業績が芳しくないからといって、売却して他のものに入れ替えていくような回転売買みたいなことはしません。

河野

じゃあ、一回コミットしたら、原則売らないと。

鎌田さん

残高調整という、細かなポートフォリオ管理みたいなことはやるんですが、一定割合はずっと保有します。ただ会社も生き物ですから、やはり途中で経営者が変わったり、もともとの経営理念からやっていることがズレてくる、みたいなこともゼロではないので、会社の性質が変わってしまったら残念ながら全売却ということもあるのですが、なるべくそうならないように対話をして、投資先さんとも信頼関係をつくっていって、ちょっとズレてきたら「それは違うんじゃないか?」ということをお話しさせていただいたりしながら、「いい会社」として成長できるような伴走をしていくんです。

そうすると最初はやはり手間ひまはかかるのですが、いざ何かに取り組むことになった時に非常に強い関係性ができる。これがおそらく鎌倉投信の存在価値ということになると思います。

「経済」は豊かな社会をつくる「手段」

小松

私の子どもの頃の「経済」のイメージは、お金を払って、物をもらって…の繰り返しで、なんだか小さい輪っかをぐるぐる回しているようなものを想像していたんですが、鎌田さんのお話を聞いていたら、100年先、200年先のことまで考えて長く長くという、そんな経済があるんだ!ってすごく感動しました。鎌田さんが思う、そもそもの「経済」ってどういうことでしょうか?

鎌田さん

今回のコロナで非常に明確になったんですが、経済というのは、社会の安定と、人の命の安定が保証された上で成り立つものですよね。命の安定の上に経済は成り立つのであって、経済を優先して社会を不安定にしてはいけないということなんです。だから経済というのはあくまで社会を豊かにする「水脈」的なものだと。

人が安心して暮らせる社会をつくるというのが目的で、経済はその手段。金融は、その経済をうまく回すための、さらなる裏方です。そこが主従逆転して社会にひずみが生まれても、なお経済第一でやっていると、例えばリーマンショックやバブルの崩壊みたいなことが起きたり、効率性ばかりを求めていくと、今回のパンデミックにおける医療体制のような、どこかに何かしらの皺寄せが出たりする。「行き過ぎた経済優先から生まれるリスク」というのを考えないといけないし、そもそもに立ち返ると、経済は社会を豊かにする手段であって、目的ではないということですね。

コロナから学ぶこと

小松

今回、それに気づいた方はやはり多かったんでしょうか?

鎌田さん

やはり東日本大震災の時に人の気持ちの変化はありましたよね。「人は何のために生きるのか」とか「企業は何のためにあるのか」というのは、やはり「人の力の無力さ」を感じた時に湧いてくる問いだと思うんですよね。人はやはり自然に対して畏敬の念を持たないといけないし、傲慢であってはならないと思うんです。今回のコロナもそういうことで、たった一つのウィルスが世界中を震撼させる。それに対して人間はある面で無力です。もちろん知恵でいろいろ解決していくことはできるんですが、やはり人は生命体の中でいちばん賢い、みたいな傲慢さは持ってはいけないと思うんですよね。

コロナで社会はまったく変わっていないんですよ。今まで動いていた変化が、コロナによって加速したという言い方が正しいと思うんです。もともと潜在的に持っているパンデミック・リスクが顕在化して、ここ10〜20年くらいでゆるやかに動いていた技術革新や新しいコミュニティのあり方などが今回のコロナで表面化して、これから間違いなく加速する。だから、変わったのではなくて、もともとあったものが顕在化したという捉え方の方が正しいと思います。

確かに多大な影響を与えているので、苦しい立場に置かれた人もいらっしゃるとは思いますが、この逆境をどういうふうに捉えるかが大事で、その捉え方で仕事の仕方や生き方が変わっていきます。そういうマインドチェンジ・視点の変化が、例えば投資を通じて、いろんな会社や投資家の考えに触れる機会を持つことによって、自分の中に入ってくるかもしれませんよね。

人生を変える投資

小松

鎌田さん自身が「運用者」としていろんな方とつながる中で、自分の暮らしに影響を受けているものって何ですか?

鎌田さん

足元の暮らしという意味においては、やはりお金の使い方をより考えるようになりました。どうせならやはり「良いお金の使い方」をしたいし、そのお金を使う背景を知った上で買いたいというのがあるので、一つはお金の使い方が変わったということがありますよね。

あとは、もう少し広い意味でのライフスタイルというか、人生観・価値観の話でいうと、やはりいろんな経営者さんや、ビジョン・ミッションを持って社会変革を起こそうとしている人たちの考え方に触れることによって、すごく刺激をもらうんですよね。触発されてライフスタイルや生き方が変わっていったお客様を本当にたくさん見てきました。転職する人もけっこういますよ。自分の生き方を考え直して、例えば「結い 2101」の投資先に転職された方も何人かいらっしゃいますし。

小松

ええー? それはもう人生変わっちゃいますね!

鎌田さん

だから責任あるんですよ(笑)

小松

でもそのくらい力を持ったものが「お金」なんですね。

鎌田さん

そうですね、やはりパワーがありますね。

技術革新が人々を本質的な豊かさへと導く

小松

そこから自分で?! すごい! ライフワークですね。

鎌田さん

なかなか予測するのは難しいですが、予見できる領域で言えば、いろんな業種が掛け合わさっていくということはあるでしょう。例えば農業と言っても、ITの会社か農業の会社か分からなくなるような。そういう意味でもなかなか予見はできないのですが、少なくとも現在の社会が抱えているいろんな課題は、おそらく技術革新によってさまざまな形で解決される余地が出てくるとは思うんですね。

河野

社会の安定と人の命の安定がまずあって…というお話がありましたが、そういう意味では、社会はいい方向へ向かっていると捉えていらっしゃるんですね。

鎌田さん

そうですね。学生の時に「小屋をつくりたい、家をつくりたい」と思って建築に進んだけど、なんかちょっと自分の中で違って、自分でいろいろ始めて、いろんな壁にもぶち当そう思います。こないだもある地方で新規の企業誘致をするということでビジネスコンテストがあったのですが、田舎の離島なんですけどね、そこでもやはり最先端の多彩な提案が出されていて、技術の進化によってビジネスのフィールドが物理的な場所を問わない状況になっている。鎌倉投信の社屋もそうですが、かつては、私たちのような金融事業は経済の中心である東京や大阪みたいなところじゃないと成り立たないといわれていたのが、今は田舎からでもそういう市場にアクセスができますからね。たって、で、海から環境のことにたどり着き、そしたらまた戻ってきたっていう感じ。

小松

そう考えると、やはり選択肢は増えていくということですよね。そこで自分が個人としてどんな選択をしていくのか、あるいはどんな人と手をつないでいくのかということも重要な選択ですよね。

河野

今おっしゃっていただいたことが、本質のような気がしています。人々はこれまで逆転というか、「お金のために働く」じゃないですけど、どちらかと言うと経済の方をなんとなく優先してしまっていたんですが、今の社会は本来優先すべき社会の安定・人の命の安定というような本質的なものに気づき始めていて、そういう意味ではいい方向へ向かっているんじゃないかな。

鎌田さん

「もう一度考えなさい」ということだと思うんですよね、そのバランスを。

小松

その再逆転を支えるのが、今まさに進んでいる技術革新なのかもしれないというところに希望が持てますよね。

*撮影・収録場所:鎌倉投信株式会社 https://www.kamakuraim.jp/ 

今回のゲスト

鎌田恭幸(かまたやすゆき)さん

鎌倉投信株式会社 代表取締役社長。1965年、島根県生まれ。大学卒業後、20年以上に渡り
日系・外資系信託銀行の資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長に就任。その後、2008年11月、鎌倉投信株式会社を設立。鎌倉の日本家屋に本社を構え、社会を本当に豊かにするための金融のあり方を追求し続けている。

ナビゲーター

(左)小室 慶介/(中央)こまつあかり/(右)河野 竜二

こまつあかり
岩手県出身、鎌倉在住。
ナローキャスター/ローカルコーディネーター
地域のなかにあるあらゆる声を必要な人に伝え、多様なチカラを重ね合わせながら、居心地の良い「ことづくり」をしている。
Instagram @komatsu.akari
@kamakura_coworking_house @fukasawa.ichibi @moshikama.fm828 @shigototen
湘南WorK.の冠番組である鎌倉FM「湘南LIFE&WORK」のパーソナリティを務め「湘南での豊かな暮らしと働き方」をテーマに発信。多様性を大切にした働き方、それが当たり前の社会になること。その実現へ向けて共創中。

小室 慶介(こむろ けいすけ) 
湘南鵠沼育ち、現在は辻堂在住(辻堂海浜公園の近く)。
長く東京へ通勤するスタイルでサラリーマンを経験。大手スポーツ関連サービス企業にて、事業戦略を中心に異業種とのアライアンススキーム構築を重ねるものの「通勤電車って時間の無駄だよな」という想いがある日爆発し、35歳で独立。幼い頃から「自分のスタイルを持った湘南の大人たち」に触れて育った影響か、自分自身で人生をグリップするしなやかな生き方・働き方を模索し始め「湘南WorK.」を立ち上げる。相談者が大切にしていることを引き出しながら、妥協のないお仕事探しに伴走するキャリアコンサルタント。

河野 竜二(こうの りゅうじ) 
神奈川県出身、湘南在住。
教育業界10年間のキャリアで約2,000人の就職支援に関わり、独立。キャリアコンサルタントとして活動する。それと同時に、”大人のヨリミチ提案”がコンセプトの企画団体「LIFE DESIGN VILLAGE」のプロデュースや、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局など多岐にわたって活動する。湘南が誇るパラレルワーカー。

この記事を書いた人

文筆家。2007年~2018年まで鎌倉に暮らし、湘南エリアの人々と広く交流。
現在は軽井沢に住み、新しい働き方・暮らし方を自ら探求しつつ、サステナビリティやウェルビーイングの分野を中心に執筆活動を行っている。

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