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ラジオ収録 後半
& Column
本当に大切にしたいものを知っている強さ
今回のゲスト 広田諒さんは、海岸浸食の問題を解決するためにデジタル技術を活用する自らの会社ビーコンを運営しながら、製品開発の伴走支援を行う会社オケアノースを知人と共同創業。2つの会社の経営者でありながら、同時に個人として複数の企業から業務委託を受け、さまざまな案件のプロジェクトマネージャーも務めています。29歳にして11社の名刺と経験を持ち、現在は自分の会社も含め4社に所属しながら柔軟に働く広田さん。オフは、ほぼ寝る時間のみという日々を送りながらも、快活な広田さんの声からは、今がどんなに充実しているか、イキイキと生命を燃やせているかが、喜びと共に伝わってきます。
広田さんがこのような働き方になっているのは、1社目のビーコンが一般市場で幅広いニーズを獲得するまでに、ある程度長い時間がかかるビジネスだから。幼少期から鵠沼海岸で育った広田さんにとって、身近な海岸が年々消えていくのは身に迫る出来事でしたが、世の中の多くの人々にとっては残念ながら少し遠い問題。この事業で、平たく言えば「飯を食える」ようになるのは何年も先になりそうです。だからと言ってこの事業を諦めてしまうのではなく、続けるためにどうするか。ものづくり支援という、比較的短いスパンで回収できる事業を別会社で立ち上げたのも、自身の生活を支えるために得意を生かした受託の仕事を行なっているのも、全ては自分を育ててくれた「母なる海を未来につなぎたい」という、広田さんの根本の大きな目的のため。どんなに忙しくても、自分の出発点でありゴールでもあるこのことを忘れない所に、広田さんの強さと視野の広さを感じます。広田さんがこうもしなやかに、代表取締役と一社員的な立場とを行き来できるのは、自分が本当に大事にしたいことが明確だからではないでしょうか。プライドや志を持つべきはどこなのか。それがはっきりしているからこそ、優先順位やかけるエネルギーの濃淡も明らかなのです。
プロジェクトマネジメントの業務について広田さんは、多様な人々と一緒にコミュニティ化して社会に何かを生み出していく「楽しさ」を語っています。頼まれた仕事であっても、単に糧を得るためにやっていては続かない。そこに「楽しさ」が感じられるから夢中になれる。自分が掲げた未来の大きな目的と、手元にある毎日の楽しさの両方を見つめ、志と経済性をチューニングしながら生きていく。一昔前なら、例えばミュージシャンになる夢を諦めて会社員として定年まで勤める、といった生き方が常識だったかもしれません。しかし今は複業も可能、自分が何者なのかも自分で決められる時代です。夢も叶え、現実も叶えるのが、これからのLIFEとWORKの当たり前なのかもしれません。
多様な人々が自分の中心に立脚しながら互いに結びつき、重なり合う部分でコミュニティを形成して、曼荼羅のように活動していく在り方。これからどんどん、世界は境目のないカラフルな彩りに満ちていくのではないかと思います。
「こうであらねばならない」を捨てて自分の真ん中につながり、人々の中に入っていく。他者を生かすことを考えることで、自分が生かされる。そんな生き方や働き方ができた先には、見たこともない景色が広がるのではないでしょうか。
それは争いや競争を超えた、極めて創造的な世界に思えます。多様な関係と縁がつながったその先で、広田さんが子どもの頃から胸に抱き続けている「イルカと泳ぐ夢」は、不意に、常識を超えたタイミングで叶う日が来るように思います。(森田マイコ)
今回のゲスト
広田 諒(ひろた りょう)さん
株式会社ビーコン 代表取締役
株式会社オケアノース 共同代表
1995年生まれの起業家。元日本代表のライフセーバーとして活動。
代表を引退後、All About(株式会社オールアバウト)でコンテンツマーケティングに従事した後に、H.I.S.設立者の澤田秀雄が主宰する「澤田経営道場」に入門し、2年間の経営者育成プログラムに参加。
在籍中には秋田県の地方創生業務(DMO)や、ラグーナテンボスの「鬼滅の刃」との新規レストランの立ち上げなどに従事し、2022年4月同道場を卒業と同時に、海岸経済圏をテクノロジーのチカラで持続可能な成長へと導くスタートアップ「株式会社ビーコン」を設立。