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& Column
予期せぬ鏡に出会い続けること
アナウンサーに憧れてテレビ業界に入り、そこで出会った「記者」の仕事から、知らないことを知り、伝えるべき要点をまとめ、自分の感動や感性を添えて、多くの人に伝えることができるマスメディアの魅力とやりがいを見出したという二本木美唯貴さん。「“働く”とは自分の成長であり、人生の充実」だと語る二本木さんからは、天職にめぐり逢えた人ならではの、それに取り組めば取り組むほど自分も周りも幸せになっていく明るいエネルギーが感じられます。
天職への入り口は、微妙にズレていても、間違えていてもいいのかもしれません。その仕事に取り組んでいくうちに、自分は何が好きなのか、自分はどういう人間なのか、自分に何ができるのかが少しずつ分かっていく。そしてカメラのピントが合うように、いつか自分の内側と外側がピタリと一致し、世界が鮮やかに像を結ぶ瞬間が訪れるのです。
毎日違う現場で、違う人に出会い続ける二本木さんは、日々自身のコンフォートゾーンを越え、異なる文化や価値観と交流し続けているとも言えます。それは自己を多種多様な鏡に写し続け、鏡の中の自分を発見し続けることでもあります。天職を見出すこと、つまり自分と世界とのピントを合わせるには、自分の奥深くにある純粋な核が何なのかを知ることも重要で、そのためにはさまざまな鏡に写してみながら、その位置や形、質など掴んでいくことも有効なアプローチ。予期せぬ鏡に、あなたは今どのくらい出会えているでしょうか?
質問すれば当意即妙で正解が返ってくるAIが発達する中で、私たちは「自分がタコツボ化するリスク」に晒されていることを自覚する必要があります。自らの興味関心に従って質問をしていれば、確かにその分野については深掘りできていくかもしれませんし、その先で同じような興味関心の下に結びつく人も現れるかもしれません。しかし、自分の関心や想像が及ばない世界については、どのように知り得るのか? どのように問いの言葉を増やしていけるのか? 好みに合わせてリコメンドしてくれるAIの危険性もまた然り。いつしかリコメンドされるものが自分の世界の全てになっていく、見えない鳥籠に閉じ込められていくことへの危険性に気づいていなければなりません。
こうした個人のタコツボや鳥籠から、もっと広い海や空へと連れ出してくれるものの一つが「マスメディア」ではないかと思うのです。個人的な興味関心を超え、広範な世界で起きていることを拾い上げて付箋を付け、予期せぬ多様な鏡に出会うきっかけをくれるもの。時にマスメディアに触れることで、より広い世界を知ると同時に、より多面的に自分自身を知ることができるかもしれません。未開発の可能性も含めて。しかしそのマスメディアもまた、誰かの目や意図を通して編集されていることを忘れてはなりません。最も重要なことは、個人とマスを行き来しながら自身の核を知り、さらにその先に「偏りのない目」、仏教でいう所の「正見」を養うことだと思うのです。(森田マイコ)
今回のゲスト
二本木 美唯貴(にほんぎ みゆき)さん
株式会社テレビ神奈川 キャスター
神奈川県横須賀市出身。学習院女子大学国際文化交流学部国際コミュニケーション学科卒業。
学習院女子大学3年次の時にミスキャンパスの『ミス和コンテスト2014』に出場し準グランプリに輝いた。
大学卒業後の2016年4月に鹿児島讀賣テレビのアナウンサー・記者として入社。
2019年3月で鹿児島讀賣テレビを退職して地元である神奈川県へ戻り、
テレビ神奈川に報道記者、キャスターとして再就職した。