【鎌倉FM 第79回】自分とつながったところから始める
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自分とつながったところから始める
日経航空会社のCAから、リクルート社への転職を経て、2023年、鎌倉で株式会社myakuを創業した起業家 山本万優さんが今回のゲスト。サービス業からオフィス職への転職時に、スキル不足から思った以上に苦労したご自身の経験を元に、オフィス業務未経験の女性たちのキャリアチェンジ支援サービス「NEWPASS CAREER」をリリース。「日本の女性に夜明けを」を合言葉に、目下サービスを拡大中です。
CAを辞めた5年前には、まさか自分が起業するとは思ってもみなかったと言う山本さん。しかし今では、女性たちへのキャリア支援の仕事について、やればやるほど自分も元気になるような、適職であり天職であると感じているそう。その実感と手応えがあるからこそ、山本さんにとっての「働く」とは「人生を謳歌すること」だと力強く語れるのでしょう。
山本さんがそのように言い切れる仕事を生み出すことができた背景の一つに、私は、山本さんが毎日続けているという「ジャーナリング」があると思います。
ジャーナリングとは、起きた出来事を記す日記とは異なり、その時の自分の心や頭の中にあることを書き出す行為。書かれた言葉を見ることで、現時点、「今ここ」の自分自身の感情や思考を客観的に俯瞰し、内側に流れるエネルギーの状態を確かめることができます。
今日の自分は何を感じ、どこに向かおうとしているのか。
迷っているのか、進もうとしているのか。
その微細な揺れに気づくことこそが、「自分を生きる指針を内側に持つ」という在り方なのだと山本さんは教えてくれています。
ノウハウや成功談が至るところで語られているこの時代、指針を外に求めるのは実に簡単です。答えは溢れていてすぐに見つかり、責任も誰かのせいにできる。
けれど、本当に必要な指針は、自分自身の静かな内側にしかあり得ません。
迷わなくなるのではなく、「迷っている自分をそのまま認めてあげられる」ようになること。その上で、少しずつ中心軸に戻っていくことを何度も繰り返す。
これは一見、前に進んでいないように思える作業かもしれませんが、ほんの小さなズレを放置しないための、大切な習慣なのです。数ミリのズレが、気づけば私自身との乖離、大きな違和感へと変わっていくのですから。
自分と深くつながり「地に足がついた状態」で次の一歩を選ぶ。
これは挑戦のスタートラインに立つための、静かで確かな準備です。リスキリングやスキルアップを始める前に、まず自分の内側を観察する。
疲れや空虚さ、葛藤や抑え込んだ想い。
そして、まだ使われていない力の存在。
それらに気づき、ケアし、満たしていくことが、自分を正しく認め愛する第一歩になります。
それがないまま選んだ道は、不安と焦りの延長線上で、いつかどこかでまた、「こんなはずじゃなかった」と嘆くことになるかもしれません。
では、未知の一歩を踏み出す勇気はどこから生まれるのでしょうか。
一つは先述の通り、自分を深く理解し、ケアし、満たすこと。
もう一つは、同じように生きる仲間やメンターがくれる安心感と勇気。
誰かの背中に励まされて、ふと自分の背中も押してあげられる瞬間がやって来ます。
しかし、最後の最後に現実を変えるのは、「今をどうにかして変えたい!」という、存在の奥底から湧き上がる強烈な想いです。
その瞬間、思考は役に立ちません。
まるでバンジージャンプのように、考えるより先に飛び込んでしまう。
人が人生を動かす時、その跳躍にはいつも“生命の衝動”が宿っています。
けれど、飛び込むための命綱はちゃんとある。
山本さんが柔らかく笑いながら言ったこの言葉が、それを思い出させてくれます。
「ダメだったら会社員に戻ればいい。行き来すればいい。これじゃなきゃいけない、なんてない。」
なんてしなやかで自由な言葉でしょうか。人生はひとつの形に固定される必要はなく、むしろ何度でも仕切り直せる。「なんとかなる」と信じる人は、最終的には本当に「なんとかしてしまう」ものなのです。
山本さんにとって「失敗」とは「何もしないこと」。
踏み出さないこと。生身の自分を、人生の舞台に連れて行かないこと。
私たちは皆、人生を「生き切る」ためにここにいます。
人生にもし「成功」というものがあるのなら、自分の命を完全燃焼させていると自分が実感できていることこそ、その表れなのではないでしょうか。
(角 舞子)
今回のゲスト

山本 万優(やまもと まゆ)さん
株式会社myaku 代表取締役
京都生まれ。
日系航空会社でCAとして勤務後、リクルートに転職。
営業、総合企画、新規事業、人事を経験後、2023年に株式会社myakuを創業。
未経験からのキャリアチェンジを支援する「NEWPASS CAREER」を展開中。




