【鎌倉FM 第78回】「幸せ感」を仕事に変える、コミュニティデザイナーという生き方
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「幸せ感」を仕事に変える、コミュニティデザイナーという生き方
「海辺のファーマーズマーケット」や「辻堂朝市」など、湘南で数多くのイベントを企画プロデュースしている、コミュニティデザイナーの菅原平さんが今回のゲスト。飲食業界出身で、最初はボランティアでイベントを手伝うことから始まり、約2年前、人々が集い楽しむ場を編むこの仕事を本業に据えました。自分自身がやりたいことを内省して見えてきたのは、「共感」を触媒に人々をつなげ、心地よい関係性や場をつくり出すこと。それを社会とつなげる肩書きとして名づけるなら「コミュニティデザイナー」だ、と自ら職業を生み出しました。
菅原さんが「共感」を見つけていくために大事にしていることは、「よく会話すること」だそうです。近くに行けば立ち寄って、近況を聞いたり他愛ない雑談を交わす。挨拶の延長上にあるような小さな触れ合い、自ら「心のご近所さん」をつくりに行くような行動を日々積み重ねることで、お互いに相談しやすくなる関係構築を行っています。その集積が、菅原さんの企画実現力や、広く確かな人脈を育てているのですね。
「この働き方が好き」と菅原さん。「人との交流が好きだから、自分主体で人が交わる場所をつくれるのは最強。自分が関わることで出会う人、深まる人がいるって素晴らしいこと」。そう語る一方で、常時多くの人々とコンタクトし続ける仕事だからこそ、自分が良い状態でいるために、オンオフを意識してつくるようにしているそうです。オフは人に合わないで、自分といる時間をつくる。自分が詰まってしまうと、全てが止まってしまうからと。菅原さんがすこやかに生きていることで、周りの人も世界もスムーズに動いていく。つまりは、生きることそのものが仕事になっているとも言えます。
菅原さんは自己実現と仕事が一致している状態であり、かつ人の自己実現欲求と居場所づくりも叶えています。菅原さんにとっての「働く」とは、「自分がやりたいことも実現しながら、誰かのためになること」だそう。そんな自身の働き方であり生き方を、「幸せな感じがする」と表現しており、これこそが菅原さんの最大の強みではないかと思うのです。
「コミュニティデザイナー」は、生成AIが劇的に進化していく時代において人間の活動領域が変わっていった先に、今以上に必要とされる仕事の一つではないかと思います。菅原さんがやっていることは、一つの側面から見ればイベントの企画運営ですが、見る角度を変えれば、人の孤独を癒すこと、人の悩みや苦しみを和らげること、人の自己実現・自己表現の欲求を叶えること。人の心の中に温かい灯を点し、それを輪にしていく仕事のように思います。
生成AIに仕事を奪われないために必要であるとされる19の能力※①のうち、群を抜いて最重要なのが「ウェルビーイング」、すなわち「持続的な幸福感を得る力」だそうです。身につけるための方法はいくつかありますが、その一つが「信頼できる友人や家族に囲まれて過ごす(ただし数ではない)」ことだと言われています。多くの社会的成功者と対話してきた精神科医ロバート・ウォールディンガー氏曰く、幸せを決める要素は環境や学歴、地域、経済力などではない。大好きな家族や信頼できる仲間が「幸せを感じる力」を高めてくれると発表しています。経済的な生産性が高いことだけが社会貢献ではなく、自分自身の「幸せ感」を把握し、常にその状態であり続けるための模索や調整を怠らないこと。自分がウェルビーイングであることで、周囲も地域も社会もウェルビーイングになっていく。それこそが自分にしかできない社会貢献と言えるのではないでしょうか。
菅原さんはそれを実現している点で、私たちのこれからのロールモデルの一人となり得るのです。
※①:『生成AIに仕事を奪われないために読む本』友村晋(日経プレミアシリーズ)より
(角 舞子)
今回のゲスト

菅原 平(すがわら たいら)さん
コミュニティデザイナー
岩手県一関市出身、茅ヶ崎在住。
飲食業界を経て、湘南地域での朝市やマルシェの企画を多数手がける。
人と人のあいだに共感を生み、関係性や居場所を丁寧に育てることを軸に活動中。