【鎌倉FM 第75回】働く手応えを得るために必要なこと
& Column
働く手応えを得るために必要なこと
鎌倉をホームタウンとする社会人リーグのサッカーチーム「鎌倉インターナショナルFC」に所属する高橋勇太さんが今回のゲスト。背番号33のミッドフィルダーとして活躍する選手であり、チームを支援するスポンサーやファンとの関係づくりを担う営業としての仕事も行っています。
2020年のコロナ禍で国内でのプレーがままならなくなったのを機に、その頃唯一渡航可能だったアルバニア共和国へ飛び、プロ選手として、また人間的にも異文化の中で視野が変わる経験をした高橋さん。
意見の相違や争い、感情のぶつかり合いを避ける傾向のある日本人とは打って変わって、アルバニアで体験したのは「むしろ相手にぶつかりに行ってお互いを理解し合い、和解する」というコミュニケーション。激しく言い争っていたかと思えば、数分後には肩を組んで笑い合っている彼らから、自分が大切にしていることを誤魔化さないで伝え合う姿勢と、それがもたらす関係性を学んだようです。相手の思いを推し量ることを良しとする日本。それは美しいことではあるかもしれませんが、行き過ぎれば自分の本当の思いや大切にしたい信念が分からなくなってしまったり、疑心暗鬼にもなりがち。あなたは日々、「自分のままで思い切りぶつかる」ことができているでしょうか? それは生きている実感や後悔のない人生、本当に信頼し合える友を得ることにもつながるような気がします。逆にそれがないまま、正解だけを気にし続けても、手応えは希薄にならざるを得ないでしょう。
高橋さんにとって「働く」とは「自分にエネルギーを与えてくれるもの」。フィールドでボールを蹴るのも、営業として企業を回るのも、同じ一つの自分の仕事だという認識です。営業先でいただく応援の声はもちろん、ご意見でさえも、いただくもの全てが自身のエネルギーになり、プレイする時の力に変わると言います。
自分が生きることの一部として仕事がある。だからこそ、社会との接点の一つである仕事から得られる全てを自分に取り込み、生きる力に変えていく。高橋さんの仕事への取り組み方には、そんな前向きなエネルギーの循環を感じます。自分の身体そのものを使って社会に挑むスポーツ選手だからこそ、その体感が強調されるのかもしれませんが、きっと原理は私たちも同じ。「私という一人の存在」として社会の中に生身で立つと決めた時、起こること、経験することの全てが自分を滋養するものであることに気づけるように思います。だとすれば、いかに自分自身であり続けることができるかに妥協しない強さを持つこと。甘えや卑小なわがままとは違う本物の「自己存在への責任」こそ、社会と健康的な関係を結ぶために必要なものかもしれません。
(角 舞子)
今回のゲスト

高橋 勇太(たかはし ゆうた)さん
神奈川県藤沢市出身。
八松SCやesporte藤沢などを経て、聖和学園・松本大学でプレー。
卒業後は鎌倉インターナショナルFCを経て、アルバニアの3クラブでの海外経験を積み、福井ユナイテッドFCでも活躍。
2025年シーズン、5年ぶりに鎌倉インテルへ復帰。MFとしてピッチに立つ傍ら、クラブ運営にも関わり始めている。