【湘南FM 第7回】由比ガ浜をバリアフリービーチに。海と向き合い見えてきたもの

7月8日にオンエアした第7回目のゲストは、由比ガ浜茶亭組合 組合長の増田元秀さん。湘南の夏と言えば海水浴場。きらびやかなイメージがある反面、ゴミや治安の問題など、課題も絶えず存在しています。そんな中、ひときわ人気の高い由比ヶ浜海水浴場を取りまとめているのが、増田さんが組合長を務める由比ガ浜茶亭組合。地域資源である由比ガ浜に長年向き合ってきた増田さんの、時代に乗る哲学とは?

目次

海水浴の始まりと湘南

増田さん

みなさん「海水浴」という言葉は知っていると思うんですが、これは明治の時代に「海水浴は体に良い」という海に入る健康法が提唱されたんです。ということは、海の近くにいる人じゃないと、その健康法は試せない。
 
鎌倉の場合はどうだったかと言うと、やっぱり鎌倉に別荘がある財閥のご子息とかお嬢さまがその健康法を、ということになって。古い画像なんかで日本初めての水着とか見たことない? それを着て別荘から海へ行かせるわけにいかないじゃない。だから着替える場所が必要になった。
 
浜に小屋を建てて、そこで着替えて海の中へ入って、そのうち夏だから暑くなって、海から上がってくれば喉が渇くじゃない。そこでお茶を出す。みたいなのが起源で、「浜茶屋」と呼ばれることになるわけ。そのお茶っていうのは麦茶だったらしいんだけどね(笑)

小松

へぇー!

増田さん

これが戦後の動乱期になって、食べるものもなければ当然エアコンもないし、そうすると夏になったらやることないわけ、暑いと。これはもう海に行くしかないと。人間て「動物」だしさ、避暑を求めてみんな海へ入って。これが「湘南」て呼ばれている辺りの「海水浴」の最隆盛期。

2019年夏、由比ガ浜をバリアフリーのビーチに

池田さん

今年、アダプティブビーチ(=バリアフリーのビーチ)、ものすごくSDGsに先進的に取り組むビーチとして、日本の中でもここまで形になっている海水浴場は由比ガ浜だけなんじゃないかと思うくらい、とても力を入れてますよね。

増田さん

神奈川県と鎌倉市は、SDGs未来都市に内閣府から指定されているじゃない。もともと2016年から、「ブルーフラッグ」の国際環境証を取得しているでしょ。このブルーフラッグの取得とSDGsとの関連性については、14番「海の豊かさを守ろう」と、どういうふうにリンクしていくのかっていうのを、デンマークの本部では発表しているのね。まだ日本語訳が出てきてないんだけども、とにかく取得すること自体がSDGsの達成率を上げるんだという考え方で。それを実践しているっていうのがうちの連中なんだけど。
 
*ブルーフラッグについて
http://www.feejapan.org/blueflag/bf_certify/

河野

車椅子や障がいをお持ちの方でも楽しめる海、ということで取り組みをされているんですよね?

増田さん

1回ビーチに降りてもらうと分かるんだけど、海の家全店の前にボードウォークがあって、それが公共のお手洗いからシャワーから全部つながっているのね。

小室

そもそもそのバリアフリーというか、そういうビーチにしようと思ったきっかけって何だったんですか?

増田さん

一部はね、もうブルーフラッグを取得してるんで、完成してたんですよ。去年の暮れに、内田和音(うちだかずね)という障がい者サーフィンの日本の第一人者が世界2連覇をして、これはもう3連覇も行かなきゃまずいでしょみたいな話になった時にね、彼女が「私には夢がある。その夢が来年叶わなかったら、私は3連覇行かない」って言ったんですよ。
 
その夢というのが、海外のビーチはもうバリアフリーという言葉が無いと。ふつうに車椅子の人が走っていて、サーフィンもやってて、みたいなそういう世界だと。日本がめちゃくちゃ遅れてるってことを自分が目の当たりにして日本に帰って来て、まず自分のホームである由比ガ浜をそういうビーチにしたいと。
 
じゃあ、みんなで夢叶えようよということになって、本格的に始めたんですよ。

小室

それがいよいよ今年の夏…

河野

そのスピード感は、結構すごくないですか? やろうよって言ってから、この夏に向けての。

増田さん

そうだね、半年弱だからね。

河野

そういう意味では、やはり由比ガ浜の海水浴場って、そういう先進的というか、常に新しいことをやり続けている印象があって、それを支えているのがこの由比ガ浜茶亭組合なのかなって。

増田さん

まあ、そう言っていただけるとありがたいんだけどね(笑)

達成するために必要な2つのこと

小松

長く由比ガ浜と向き合ってきた増田さんならではの「流れ」を感じたんですよね、お話の中に。そこに必ず切り返しだとか、判断力の必要なフェーズがあったと思うんですけど、長く見てきたからこそ感じている普遍的な哲学とか、何か信念みたいなものって、今だからこそ見えるものって何かあるんでしょうか?

増田さん

これはね、最近よく、うちの子たちにも言うんだけど、「信じること」と「あきらめないこと」。それさえあれば頑張れるし、達成できるんじゃないかな。
 
この事業を考える時の原点にあるものは変わっていなくて、それは「海は生命の起源」じゃないですか。どんな動物でもみんな、ここから出てきてるから、ここのDNAを持ってるはずだよね。海の環境がどうこうとかそういうこと以前に。自分たちが生を受けてきた環境そのものを生かしていく。だからそこさえ外さなければ、大概のことは間違えない。

僕がちょっと頭が良くて事業計画みたいなのを作ってやってきたということじゃなくて、原点にあるのは生命の起源であるということなんだよね。

小松

その本質というものが見え始めた段階っていつなんですか?

増田さん

人生って最後死ぬんだ、ってことが直視できた時。いろんなことがすごい明確になる。今日こうやって話してたって、何してたって、最後は誰もが死ぬってことだけが確実なんだよ。永遠の生命を受けちゃった人はこの中にいないじゃない。明日何があるかってことは不確実なことだけど、何が起こるか分からないけど、最後みんな死ぬんだってことだけが、誰にも避けられないこと。それが本当に分かるまでに、人はすごく時間がかかる。「僕も最後は死ぬんだな」って実感できた時、なんかいろんなことが見えてくる。それが僕の経験。

https://www.golfdigest.co.jp/cp/lp/bgr_2019/

今回のゲスト

増田元秀(ますだもとひで)さん

鎌倉の由比ガ浜茶亭組合 組合長。開設以来130年の歴史を誇る湘南を代表するビーチリゾート「由比ガ浜海水浴場」の、海の家等の関係者を取りまとめる。2016年に日本で初めての「ブルーフラッグビーチ」の認証を取得した立役者であり、2019年夏には、由比ガ浜海水浴場の公共トイレやシャワー、海の家全店をボードウォークでつなぎ、アダプティブビーチ(車椅子の人でも楽しめるバリアフリービーチ)を実現。鎌倉市からも称えられ、メディアにも多数取り上げられた。
https://www.facebook.com/yuigahama1/

ナビゲーター

(左)小室 慶介/(中央)こまつあかり/(右)河野 竜二

こまつあかり
岩手県出身、鎌倉在住。
ナローキャスター/ローカルコーディネーター
地域のなかにあるあらゆる声を必要な人に伝え、多様なチカラを重ね合わせながら、居心地の良い「ことづくり」をしている。
Instagram @komatsu.akari
@kamakura_coworking_house @fukasawa.ichibi @moshikama.fm828 @shigototen
湘南WorK.の冠番組である鎌倉FM「湘南LIFE&WORK」のパーソナリティを務め「湘南での豊かな暮らしと働き方」をテーマに発信。多様性を大切にした働き方、それが当たり前の社会になること。その実現へ向けて共創中。

小室 慶介(こむろ けいすけ) 
湘南鵠沼育ち、現在は辻堂在住(辻堂海浜公園の近く)。
長く東京へ通勤するスタイルでサラリーマンを経験。大手スポーツ関連サービス企業にて、事業戦略を中心に異業種とのアライアンススキーム構築を重ねるものの「通勤電車って時間の無駄だよな」という想いがある日爆発し、35歳で独立。幼い頃から「自分のスタイルを持った湘南の大人たち」に触れて育った影響か、自分自身で人生をグリップするしなやかな生き方・働き方を模索し始め「湘南WorK.」を立ち上げる。相談者が大切にしていることを引き出しながら、妥協のないお仕事探しに伴走するキャリアコンサルタント。

河野 竜二(こうの りゅうじ) 
神奈川県出身、湘南在住。
教育業界10年間のキャリアで約2,000人の就職支援に関わり、独立。キャリアコンサルタントとして活動する。それと同時に、”大人のヨリミチ提案”がコンセプトの企画団体「LIFE DESIGN VILLAGE」のプロデュースや、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局など多岐にわたって活動する。湘南が誇るパラレルワーカー。

この記事を書いた人

文筆家。2007年~2018年まで鎌倉に暮らし、湘南エリアの人々と広く交流。
現在は軽井沢に住み、新しい働き方・暮らし方を自ら探求しつつ、サステナビリティやウェルビーイングの分野を中心に執筆活動を行っている。

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