ラジオ収録 前半
ラジオ収録 後半
& Column
自分の「働く」の本番を、どう選ぶか。
ソニーの技術者を16年間勤めた後に起業し、リユース容器のシェアサービス「Megloo」を開発・展開している善積真吾さん。企業人として歩む間に、「利益中心」の製品開発から「人間中心」、さらには「地球中心」のものづくりがしたいと、自身の価値観や感性が変化していったそうです。
時代の風とお子さんの誕生により、ふと蘇った大学生時代の記憶。そもそも自分は地球の環境悪化に胸を痛めていたのだった。未来の世代になんとか良い環境の地球をつなぐために、自分の力を使いたい。そこで始めたのがこの事業でした。ソニー時代に作っていたのはメカでしたが、今作っているリユース容器も、ものづくりの構造や大事なポイントは同じと語る善積さん。目的に向かって関係者と試行錯誤しながら、より良い物を作り上げて届けること。その目的は「地球のため」という大きさにまで拡大しましたが、世界一のメーカーで鍛えた足腰が今の善積さんの前進を揺るぎなく支えています。
善積さんにとっての「働く」とは、「地球のためになるものを作って価値を提供し、社会で生きていくこと」だと語っています。私はこの「社会で生きていく」も含めて「働く」と捉える善積さんの視野にハッとするのです。社会起業家を超えて、いわば「地球起業家」と呼んでもいいほどの広い視野で、自身の欲(意欲)=原動力が利他や公益へと向かっている善積さんの「働く動機・目的の成長」に、気付かされるものがあります。大学生の時に感じた環境に対する問題意識、それを16年の社会人生活の中で培った実力を持って、ようやく今、社会の中での「自分の仕事」にし始めた善積さん。そのきっかけが、自身の子どもがゴミを拾う姿だったという所にも真実のエネルギーを感じますし、このような大きな課題を扱えるようになった善積さんの社会人としての進化に、「働く」が人に及ぼす大きな可能性を感じるのです。
30代半ばくらいまでは、ある意味で長い訓練期間なのかもしれません。そしてそれが終わった時、自分がどのような本番を生きるのか。ごく私的な動機と、地球規模の動機を統合させながら、身に付けた力を社会の中で使っていく善積さんに、これから私たちが選びたい「働く」のモデルを見ると同時に、私たち自身の「働く」にも希望やワクワクが萌してくるのを感じます。(森田マイコ)
今回のゲスト
善積 真吾(よしづみ しんご)さん
株式会社カマン FOUNDER & CEO
慶應義塾大学理工学研究科(修士)卒業後、2005年ソニー株式会社へ入社。
新しい事業を生み出すには技術だけでなく経営を学ぶ必要性を感じ、アントレプレナーシップに強いスペインのIE Business SchoolにてMBAを取得。
帰国後、ソニーの新規事業創出プログラムのオーディション立ち上げに参画。
事業開発、海外展開、設計開発リーダーを経験。
Sony Startup Acceleration Programでプロデューサーとして、100チーム以上の大企業・ベンチャー・大学・NPOの新規事業立ち上げ支援(アイデア創出から事業化までの伴走)。
ソニー株式会社で16年間勤務後、2020年11月に地域循環型社会構築のため、株式会社カマンを創業。テイクアウト用の使い捨て容器削減のため、地域共通のリユース容器シェアリングサービスMegloo(メグルー)を立ち上げる。
起業支援拠点「HATSU鎌倉」事業支援メンター、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員。