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& Column
「体験」に心を開くことから始まる新しい世界
新卒で入社した会社に15年勤めながら、社長に直訴するという形で、全く新しいサービスを提供する独自の会社「CHOYA shops株式会社」を創業した菅健太郎さん。会社員であっても勇敢なチャレンジは可能であることを、その背中で教えてくれています。菅さんの原動力となっているのは、梅酒メーカーの営業を経て、工場勤務時代に自身が経験した「梅との感動的な出会い」を 源泉とする、「梅体験をお客様に届けたい」という情熱。「起業したい」でもなく、「自由に働きたい」でもなく、どんな困難にも揺るがないほどの「心震える自分自身の感動体験」が、菅さんを前へ前へと運んできました。
注目したいのが、菅さんの「梅との出会い」が、正確には「梅との出会い直し」であるという点です。何年も勤めた会社の主力商品の原料である梅が工場に入荷されてきた時、その香りや色、形や手触りが菅さんの五感にもたらした衝撃が、「売らなければならない商品」を「届けたくてたまらない感動」へ、「働かされる」を「働く」へと変えてしまいました。この梅との再会に心を開くことができた菅さんの資質こそ、実は私たちが最も大事にしたいものではないでしょうか。
故・鈴木大拙老師が言うところの「禅心初心」、いつでも初めての眼差しで世界を見る、自らの感覚や心を刷新し続ける、気づきへの基本姿勢のようなもの。菅さんはそれを意図していたわけではないと思われますが、自らの感動に気づき、その感動を正面から真摯に扱った結果、導かれた天職への道なのではないか、「自分に嘘をつかない」とはこういうことではないかと思うのです。「梅との再会」に驚きを持って目を見開くことができる自分自身であり続けることが、「本当にやりたいこと」や「生きる手応え」に出会うための鍵なのかもしれません。
ネット上に転がる誰かが発信した情報を集めてきれいにまとめることに関してはAIの方が上手にできるようになった今、私たちはこれまで以上に自分自身の心と体を使って、物事をゼロ地点で「体験」することにこそ、エネルギーと時間を費やす価値があると言えます。そこで自分は何を感じるのだろう? そして感じたことを素直にまっすぐ取り扱うとどうなるだろう? こうして心と体を一致させた所から生まれる言葉や行動の先に、菅さんが「人生でいちばん面白いこと」と言い切るほどの「働く」があるような気がしますし、そこまで辿り着けた「働く」は、自分自身の公私やエゴを超えて、大きな世界の成り立ちの中の、一つの「働き」にさえなっているように思います。(森田マイコ)
今回のゲスト
菅 健太郎(すが けんたろう)さん
CHOYA shops株式会社 代表取締役
神戸大学大学院自然科学研究科 博士前期課程 修了。
2004年4月チョーヤ梅酒株式会社入社。
大阪支店販売課、製造部伊賀上野工場品質管理課、製造部生産効率推進課責任者を経て、
2018年4月梅体験専門店「蝶矢」京都店、
2020年6月梅体験専門店「蝶矢」鎌倉店、
2021年1月梅体験専門店「蝶矢」オンラインショップを立ち上げる。
2021年4月に、CHOYA shops株式会社 代表取締役に就任。