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& Column
生命のグルーヴが生み出す「働く」
前職では世界的精密機器メーカーの研究員として、一切の電波等を遮断する「電波暗室」の中で開発を行なっていた経験を持つMUSVI株式会社 代表取締役の阪井祐介さん。恐ろしいほど無音・無振動のその空間に入っていると、ぐったりしてしまった、と話しています。その特殊な空間ではきっと、電波だけでなくあらゆる周波数のエネルギー、つまり目には見えないけれど自然界に満ちている「気」や「生命力」といったものまでシャットアウトされていたからだと思われます。その証拠に、週末に、阪井さんが現在お住まいの葉山にセーリングに出かけ、海や山、生き物のざわめきに包まれているとみるみる元気が回復したとのこと。湘南エリアは圧倒的な力が補給され続ける場所だと感じるとおっしゃっています。
最先端の量子物理学の分野でも明らかになっているように、私たちの肉体を含むすべての存在が振動する微粒子の集合体なのだとしたら、この世界は多様な周波数が行き交い、混じり合い、共鳴し合う「グルーヴに満ちた世界」と捉えることもできます。阪井さんが開発した次世代のコミュニケーションシステム「窓」は、離れた空間と空間を、まるで壁に窓を開けてくっつけたかのようにつなぐ装置。「窓」の向こうの人々の気配や息づかい、生命のグルーヴまでも感じられるコミュニケーションを実現しています。「窓」が開いてつながった瞬間に人々の間に湧き起こる「わぁっ!つながった!」という歓喜の声が、阪井さんにこの仕事の意味、ひいては自分が生きる意味を教えてくれるようです。人が生命の根本として持って生まれた「出会いたい、つながりたい」という欲求。いつでもどこでも情報にアクセスできる現代にありながら、多くの人々が檻の中に一人閉じ込められたような孤独に苛まれているのもまた事実。私たちは「情報」のやり取りができさえすれば満たされる生き物ではないようです。「窓」が風穴を開けたのは、「情報化社会」の次の時代への壁だったのかもしれません。
リーダーシップの現場などで、しばしば「人を巻き込む」という言葉が使われます。しかし私は阪井さんの「伝播する」というスタイルが、より正確に望ましい在り方を示しているような気がします。「僕が提供できるのはお金でも評価でもない。楽しい時間だけ」とおっしゃる阪井さんの「窓」への情熱、「つながる楽しさ」のグルーヴが、周囲に伝播し、新たな振動を呼び起こし、共鳴し合って想像を超える倍音を生んでいく。「窓」を中心に関係者の間で起きているのはそんな共振状態なのかもしれません。そしていずれその状況は、利用者の間にも広がっていくことでしょう。
「正しい」よりも、「楽しい」は強い。その真実を阪井さんに再び念押しされたような気がします。楽しむ力が引き出すのびしろや可能性、軽やかで楽しいグルーヴが持つ伝播力の広範さと速さ。その渦中で生きたいなら、まずすべきことは、自分にとっての真の楽しさを感じる力を研ぎ澄ませることではないでしょうか。自分の生命力やグルーヴの源、言い換えれば自分の「ハラ」「真実」と、まずはしっかりつながっている必要があります。私の生命力は何に打ちふるえるのか。それが誰かの振動と響き合って、「ご縁」という名のグルーヴを生み出す。偽物のグルーヴには、偽物が共鳴してしまうのですから注意が必要です。(森田マイコ)
今回のゲスト
阪井 祐介(さかい ゆうすけ)さん
MUSVI株式会社 代表取締役 Founder&CEO
1999年ソニー入社から20年以上にわたり、距離の制約を超えて”あたかも同じ空間にいるような”自然なコミュニケーションを可能とする「窓」の実現に向けて、認知心理学、建築、インタラクションデザインの観点から研究開発を行う。
2019年よりSRE AI Partners(株)において、人と人、空間をつなぐコンサルティング事業を、オフィス、医療・介護、教育、地域創生等の幅広い領域で展開。
2022年にMUSVI株式会社を創業し「窓」のさらなる社会実装を進める。
趣味は、ヨット、合気道、放浪。