4月8日にオンエアした第4回目のゲストは、逗子駅前で土曜日だけのコーヒーショップ「アンドサタデー 珈琲と編集と」を開いた編集ユニット庄司賢吾(しょうじけんご)さんと庄司真帆 (しょうじまほ)さんです。平日は会社員として都心へ通勤し、東京と逗子を行き来しながら暮らしと仕事を実現させるお2人の心地よい生き方とは? 逗子のお店でお話を伺いました。
都内から逗子に住み移り、珈琲店を開業
お店自体は何年前から?
2017年の7月からなので、1年半とちょっとかな。もう少しで丸2年。そもそも逗子に引っ越してきたのは2017年の3月。
え? 4ヶ月…! お店を出したいと見越して引っ越してきたんですか?
いえ、逗子に引っ越してきたのは、逗子が本当に好きで気に入ってというところが強く。ただ「2人でお店とか場を将来持ちたいね」っていう話はずっと常々してきたんですけど、まさか自分たちも3月引っ越しの7月オープンとは思っていなかったです。
海の風と東京の風の両方が吹く逗子が好き
なんで逗子だったんですか?
逗子は、心地よさのバランスが2人の中で腑に落ちた。きれいな海もあって、山もあって、昔ながらの商店もあるけど、東京まで1時間で出られて、海の風が流れている町でありつつ、都内からも風が吹き込んでいる感じがすごく心地よかったんです。
ああ、いいですねぇ。都内に通える範囲内、かつそういう場所を求めてたんですね。
それは前提としてありましたね。
逗子にお住まいを移されて、変わった部分はありますか? 意識とか、時間の使い方とか。
たぶんみんなが感じていることだと思うけど、やっぱり時間の流れ方が都内と全然違う。都内にいた時は、生活と仕事が良くも悪くもあまり切り替えられないというか、仕事のサイクルの延⻑で生活してました。割と慌ただしかった気がするんですけど、同じ慌ただしさでも、やっぱり住まいが自然豊かな方に離れてあると、気持ちの上では、自分が自分らしいところに揺り戻ってくる感覚みたいなのが毎日あります。
確かに通勤時間とか、時間が奪われているような感覚があるかもしれないけど。
都内の時は、そう。
より自分らしくいられるスイッチみたいなものを得たのかなぁ。
うんうん。
サブではなくて、どれも本気の「複業」
なんで転職をしようと? 何かきっかけはあったんですか?
僕は、会社に所属している限り、自分の力で生きていってる実感があんまり無くて、仕組み化されてる部分に乗ってる仕事だなぁっていうのをすごく感じていて。それだったらここで働き方を変えて、自分の力で勝負できるような生き方をしてみたいと思ったんですね。
それと同時に、今まで仕事起点で、仕事をベースに人生を進めていたけど、暮らしとか、家族とかの方がやっぱり大切だから、そっちに軸足を持った生き方をしてみたいなぁと思ったんです。家族の将来を守る部分は作った方が健全かなって感じたところがあって。僕は今は都内で正社員として働きながら、平日は都内まで通って、土曜日はこういう活動をしています。
最近「ふく業」の「ふく」の考え方もいろいろあるなと思ってて、 ちょっと前まで「サブ」という意味での「副」のイメージだったと思うんです が、最近本当に「複数ただ兼ねてるだけ」というか、こっちが主でこっちがサブというよりは、私たちの感覚としてはどっちも本気でやっていて、「複数、業を複合している」という感覚で。この「ふく業」ってものの捉え方が、人や場所によって変わってくるんだろうなって。いろんな人と話してそう思います ね。だから「サブなんですか?」って言われると「いや、こっちはこっちで本気だし」っていう。
両方にとって良い効果があると捉えられている人が、うまく行くのかもしれないですね。
曜日や時間帯で異なるニーズを形に
土曜日だけっていう、良い意味で時間の区切りを作っている印象がありますが、何かそういう意識はありますか? 平日と土曜日とバシッと切り替えるというか。
やっぱりその時間とかその曜日で、やりたいこと、できること、求められてることが絶対違うよねっていうのが根本にありますね。自分たちも平日は勤めたりしながら、でも平日の夜に勤め帰りの人がすごくたくさんいるこの町で、夜に体に良いごはんが食べられる食堂があったら絶対自分たちもうれしいよねっていうことで、今後は「深夜食堂」というのを平日はここで営業しようとしています。
でも土曜日は土曜日で、やっぱりこうやってみんなが「やっと一週間終わったぜ」っていう気持ちでコミュニケーションが取れる空間が、この1年半でみんなすごく求めているのが分かって。「土曜日だから来た」とか、「今週も土曜日だって感じる」みたいなことで集まってくださることが多いので、このコミ ュニティの場は続けたいと思っています。
それで、そういった「ちょっとやってみたい」という人を応援したいから、気軽にお店をやる体験ができるように、そういう人たちに日曜日は逆にお店に立ってもらって開けようかという形で、時間軸や曜日で区切りながら、自分たちもお店も設計している感じ。
珈琲屋さんではなく「場の編集者」
気になっていたのが、「珈琲と編集と」っていうコンセプト。これ、どんな想いが込められているんですか?
僕たちは「珈琲屋さん」以前に、「編集者」であると思っていまして。美味しいコーヒーを出すというところはもちろんプロフェッショナルとして追求して行くんですけど、それ以外の「場づくり」そのものが「編集」なんじゃないかと考えているので、そういうサブコピーを付けているんで す。
アンドサタデーの魅力って何だろう? とすごく考えていたんですけど、 アンドサタデーみたいな空間ってあるようで無いんですよ。例えば、馴染みのバーといったら、金曜日の夜、仕事が終わってから遅い時間に行く、みたいなことですけど、でも土曜日の昼間からみんなで集まって、みんなで会話する空間はあるようで無い気がするんですよ。
確かにね。
確かに。
町の「あったらいいな」をみんなでつくる、創造的たまり場
ギュッとした土曜日の時間に誰かしら地元の人がいて、そこにさらにちょっと都内から遊びに来てくれた人がいて、いろんな出会いがあって。それを私たちも感じるし、逆にカウンターの向こう側に座っているみなさんも感じてくれるのがすごくうれしいなぁと思っていて。私たちが割とそんなに出かけるタイプじゃないんですよ。でもたくさんの人に会いたいから、じゃあ来てもらったらいいねって(笑)。本当に久しぶりの友達もいれば、「初めまして」もいて。
なので、本当にこのアンドサタデーを始めたことでできたご縁みたいなのがめちゃくちゃあります。お客さん同士も出会って何か仕事になってるとか、プロジェクトになってることが実際あると、こういった「たまり場」が機能してるんじゃないかなって思える瞬間です。
たぶん「あったらいいな」っていうものを想像するのがすごく得意なんじゃないですかね。で、それを形にできる。夜に健康的な料理が食べられたらっていうのが、今まさにやってるプロジェクトだし、土曜日の昼間の時間帯にみんなが集まれる場所があったらいいなっていう、そこを想像する「想像力」 と、それを形にする「編集力」と、そういうのがお2人にはすごくあるんでしょうね。
作られたものじゃなくて、ご自身たちが感じていることの延⻑上だから、そこに本質っていうか、想いが入っていて、そこに共感する人が多いんじ ゃないかなと思いますね。
今回のゲスト
庄司賢吾(しょうじけんご)さん・庄司真帆 (しょうじまほ)さん
逗子在住の編集ユニット。平日は都内に通勤しながら、土曜日だけ逗子駅前で珈琲店「アンドサタデー」を営業する30代のパラレルキャリア夫婦。珈琲店を街の編集室として捉え、雑誌の特集を組むかのように、珈琲と音楽、本、スイーツ、ごはんなど、多様なゲストと一緒に体験までを編集している。
「アンドサタデー 珈琲と編集と」Facebook https://www.facebook.com/andsaturday/
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「深夜食堂プロジェクト」
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