【鎌倉FM 第34回】手をつながない、つながり方

今回のゲストは、葉山在住のフードデザイナー 横田美宝子さんです。SDGsの浸透と共に注目されるフードアクション。新型コロナウィルスの影響もあり、「食」を見つめ直した方も多いのでは。時代がこうなるずっと前から「食」を通じてアクションを起こし続けている横田さんは、フードデザイナーとしてどのように食や人と向き合ってきたのでしょうか? 土や食材、人々との関係においても共通しているという横田さんの「距離感」とは? そのプロフェッショナルの流儀を伺います。

目次

旬の五味五色をバランスよく食べて整える

小松

今日は葉山町上山口にありますフードスタジオ「3pm(さんじ)」にお邪魔しています。今日のゲストはフードデザイナーの横田美宝子さんです。「フードデザイナー」とご紹介しましたけれども、これはいったいどういうものなんですか?

横田さん

最近、身近でも聞くようになって来たんじゃないかと思うんですが、例えば家庭科の教科書にも「フードデザイン」という言葉が出てきています。栄養を考えて、バランス良く食べて体を整えましょうっていうことも「フードデザイン」といいますし、「五味五色」といいますように、見た目も美しく、しかもいろいろな味で体に働きかけて整えるという意味もあります。また、美しくテーブルセッティングをしたらおいしく食が進むといった意味でも、家庭科の教科書ではフードデザインという言葉を使っていると思います。

小松

家庭科の教科書に「フードデザイン」が出てくるということを今日初めて知りました。横田さん活動のコンセプト「色を食べる®️」について教えていただけますか?

横田さん

はい。みんな無意識に口にしているんですが、本当に自然界って色とりどり、宝なんですよ。だから、数値化された栄養素がどうのとか、これを食べたら体に良いとか悪いとか、そういうことだけじゃなくて、旬の色を食べると自然に元気になりますよという、理屈じゃなく「色を食べる®️」という提案をしています。
 
今、多様性とかダイバーシティという言葉を、この2、3年本当によく聞くようになりましたよね。人も人それぞれ、色とりどりじゃないですか。誰が良い悪いじゃなくて、あなたはあなたの持ち味、君はこの特技があるよねと。それを色に喩えたら「カラフル」ですよね。

小松

本当にそうですね。まさに横田さんが手掛けているフードプロジェクトにも、色とりどりの人たちが関わっている印象がありますが、具体的には今どんなことを仕事として行っているんですか?

横田さん

例えば食べ物って、ちょっとシビアな課題もあるじゃないですか、食品廃棄とか。そういう課題に対して、フードデザインの力を借りてハッピーに解決することをしています。どういうことかと言うと、見た目を惹かれるようなデザインやパッケージにすることで、廃れていく食文化にもう一度スポットライトを当てたりするのもフードデザイナーの仕事なんです。だから食による地域活性化の相談を受けたりもしていて、たくさん売ってたくさん破棄するようなことではなく、ちゃんとそのものの個性を生かして、その地に根付いた商品開発を行なったりしています。分かりやすく言うと、SDGsを視野に入れた商品開発ですね。SDGsが出てくる前からやっていることだから、ちょっとくすぐったいですけど。丸ごと使い切るとか、見た目の良し悪し関係なく加工できるとか、地域に根付いた食文化を次の世代に残すようなひと工夫を施して生まれ変わらせた商品などを開発しています。

「操作」しない。敬意を持っているからこそ、いい距離感で

小松

横田さんの活動ですごいなって思うのは、誰かと一緒に手をつないでやっていく姿勢というか、課題の共有をしているところ。一緒に手をつなぐ時って、もちろんパワーも倍になるんだけど難しさもあると思うんです。そういう壁をどうやって突破しているのかなって。

横田さん

まず、言葉だけの問題かもしれないですけど「手をつなぐ」ってことはしてないですね。

小松

どういう感覚なんですか?

横田さん

やっぱり触れ合う距離、立ち位置というか、距離感というか、手をつないでしまうから見えなくなってしまう部分もある気がするんです。ある程度、いい意味での距離感が大事かなと。「さじ加減」「いい塩梅」という言葉が日本にはありますよね。それを無意識でしている気がするんですよ。もともと群れるのは好きではなくて、どこかに所属するのも苦手。でも全然違う個性の人に敬意や魅力を感じるのも事実なんですよね。だからこそ、ある程度距離は保って、でも空気感というか温もりは感じているというようなスタンス。だから相手ととことん話しますし、こんなに?っていうぐらい捕まえちゃいます。捕まえて、1回箱に入ったのを、もう1回出してまた話すみたいなことをしちゃうかも(笑)

小松

素朴に思った疑問とか、これどうなの?というところをうやむやにしない感じですかね。

横田さん

「操作」しない。自分の感情や気持ちを相手に押し付けない。それは大地にも同じことが言えて、大地を操作するのはとんでもない。もしかしたらきれいに並んだ均一な野菜ができるかもしれないけど、不自然な状態になって個性がなくなってしまうでしょ。それと一緒で、大地も操作しないし、人も操作しない。というより、自分にはまったく操作できないですね。

小松

なるほどね! そういう意識があるんですね。

横田さん

違和感は違和感のままにしない。ただ、人それぞれのタイミングってあるでしょ? 忙しくしている人に「あのねあのね、これなんだけど」って言っても、それでは良い会話は生まれないから、ひと呼吸置いて、飲み込んで、改めて、とかそういう配慮はしますよ。

小松

気遣いと共にね。

横田さん

一応はしてるつもりなんですけど(笑)

ずっと前からやっていたことが結果的にSDGs

小松

福祉連携の取り組みもされていますよね。今、まさに私も興味があり、世の中の流れとしても注目が集まっている分野ではないかと思います。今、横田さんがされている福祉連携の商品について教えていただけますか?

横田さん

マーガレットケーキというのですが、相模女子大学の食物栄養学科の卒業生が、キャンパスに生育している梅で毎年梅酒を作っていたんですけど、梅酒のストックがだんだん溜まっちゃうじゃないですか。それを使って、相模女子大ならではの何かができないかというご相談が来たのが、ちょうど2010年だったと思います。その後、震災が起きて弊社の業務が一旦止まったので、その間にできることをやろうと思って、その開発を一緒にさせていただきました。
 
そして偶然か必然か、同時期に「mai!えるしい」という、今連携している社会福祉法人でお菓子づくりの指導をしてほしいというお話が来たんです。じゃあ、その大学と福祉をどうつなげるかということでプロジェクトが始まりました。当初は、大学側は本当に福祉施設に任せて大丈夫か?という不安もありました。当時の教授や関係者がみんな施設に見学にいらして、「ここだったら衛生的にも大丈夫だ、お任せします」って言ってくださって。
 
そこからいろんなことを経て、今に至ります。直近では伊勢丹三越さんが通販で扱ってくださったり、「ボーノ相模大野」という駅ビルで相模原市が運営している物産展みたいなスペースで扱っていただいたり、いわゆる産官学連携になっています。

小松

結果、連携していったんですね。最初から描いてやってきたというよりも。

横田さん

そうですね、一つ一つ目の前のことを、やりたくなることをやっていったという。自分ではあまり特別なこともしてないし、気負いもないんですよ、正直。

小松

10年前というと、まだもちろんSDGsという言葉もなかったですね。横田さんの中の感覚としては、本当に目の前に来たご縁やタイミングみたいなものを、ただただ紡いできたような…。

横田さん

今は「フードロス」といって、もったいない野菜を使っていろいろな取り組みがされていますよね。私もできるだけ廃棄しないという視点なのですが、あえてそのもったいない野菜を使っているわけではないんです。結果的にはそうなることもありますけど。要は、例えば目の前に現れた素材を、葉っぱも皮も丸ごと使って捨てるところをつくらないというのが、私なりのフードロスの取り組み。結果、こんな小さい野菜だけど使うとか、虫食いで色もきれいじゃないけど使うということはありますが、別にそれに特化しているわけではないんです。丸ごと使い切るのは昔からだから。

小松

横田さん自身が、それが心地いいからですか?

横田さん

そうそう、おいしいし。根っこは苦みがあるし、独特の歯ごたえがある。皮もそうですよ、シャキシャキして。それをおいしくいただくのは知恵ですよね。食べ物を含め、やっぱり「モノ」に失礼じゃないように関わりたい。だから美しくあるというのが、一つのデザイン的な特徴だったものかもしれない。色と同時にね。あとは組み合わせですよ。苦いものの中にちょっと甘みを入れるとか。でもテクニックでも何でもなくて、旬のものをいただくと、苦かったり甘みがあったり、それが色と紐づいて万遍なくあるから、「色を食べる®️」ことをすると、それが理屈じゃなく網羅されちゃうんです。難しいことはしてないです。数式がこうだからとか、成分が何とか、これは体に良いとか、私何にも知らないですよ。色と味覚、食感で入って、結果後づけで「この甘味はなんだろう?」って探ったらデンプン質だった、とか。

小松

お話を聞いて、やっぱり体感はすごい大事だなと思いました。自分がどう感じるかって、いちばん大事にしないといけないと改めて思いました。

まず自分が上機嫌で巡ることが大事

小松

葉山は今、お住まいではないんですよね?

横田さん

以前ずっと住んでいたんですけど、今は近郊に。

小松

葉山に住んだ理由は何だったんですか?

横田さん

やっぱりこの空気感かな。あんまりせかせか急ぐ必要もないし、朝は光と共に目が覚めるし、虫の声もするし、何かそういう当たり前のことがとても私はうれしかったのかな。

小松

今、いろんな地域の食と魅力を再発掘されていると思うんですけど、外側から見た湘南エリアってどうですか?

横田さん

恵まれていると思います、まず食材が。当たり前のように自然農法や有機栽培、無農薬で農業をされている人がたくさんいらっしゃるし、ちょっとトマト足りないからって言ったら、トマトをくださる生産者の方が歩ける距離にいらしたり。スーパーでお買い物しないわけじゃないけど、買わなくても野菜が手に入りますよね。それがなんて恵まれているんだろうと思いました。

小松

意外とそういうのがないんですかね、他の地域だと。

横田さん

ないところもあると思いました。野菜を買うのにすごくお金がかかっちゃうような地域もありますよね。

小松

近過ぎてあまり意識したことなかったですけど、確かにそうかも。すぐそこに生産者の顔が見えるという特徴はありそうですね。

横田さん

ただ、その足りない環境を追いかけてもしょうがないので、もしそういう環境だったら、その中で何を生み出すかという優先順位がちょっと変わるだけだから。

小松

その土地に行って出会った人や感じたおいしさ、そういったものに素直であるということなんですかね。

横田さん

それも、素材とも別に手をつながない。距離感。

小松

素材とも。

横田さん

つないじゃうと、オーガニックだから良い、みたいになっちゃうでしょ。そういうことではないから。

小松

そこが、横田さんがいちばん心地いいと思った関係性なんですね。素材も人も、とにかく「そこにある」っていうことを感じ合う。

横田さん

たぶん子育てもそうだった気がする。その代わり、何かがあったら「来い!」って受け止める姿勢は常にあります。

小松

改めて、ですけど、「フードデザイナー」と名乗っている横田さんが、食に携わる者として大事にしていることって何ですか?

横田さん

やっぱり自分の気持ちや体を最優先で関わって、その先で「人のため」というキーワードは私にはないけれど(笑)、要はまず自分じゃないですか。自己中心的で大いにけっこう。過去に体を壊したことがあったんです。それでは持続可能にもならないし、結局人に迷惑かけてるんだと思いました。だって、体調が良くないと仏頂面で機嫌も悪くなるわけだし、疲れていたら、ふだん5個できることが1になって、残りの4は周りの人がやらなきゃいけないわけだから、ということは、やっぱり自分が上機嫌で巡るような組み立て方に変えようって思ったんですよね。たぶんどこかの瞬間で。いつか忘れちゃったけど(笑)

小松

横田さんにもそういう時があったんですね。

横田さん

ありました。

小松

そこを経ての今なんですね。

横田さん

本当はすごくシンプルな気がする。すべて。

今回のゲスト

横田美宝子(よこたみほこ)さん

 株式会社3pm・さんじ代表取締役。一般社団法人pot・au・feuプロジェクト協会代表理事。葉山にある3pmフードスタジオ、おやつ&デリ「3pm・さんじ」のオーナー。フードデザイナー。個性と個性が共鳴しあい、これまでにない新しい価値ある商品・場所を創る「ecHo kitchen ― 響き合いが新しい色を生み出す」ブランド主宰。著書に『3pmさんのおやつまみいろいろ 野菜そのままの自然の色がおいしい!』(文化出版局)がある。鎌倉薬膳アカデミーの山内正惠先生に師事。自然の色を目から楽しむことを大切にし、生産者から直接食材を仕入れて、薬膳のメソッドと四季のリズムを生かした、独自の養生ご飯とおやつを作っている。企業や大学とのコラボレーションによる商品開発、就労支援施設での菓子製造指導など多方面で活動中。
 
3pm webサイト▶︎ http://www.3pmsanji.com/
 
Instagram ▶︎ https://www.instagram.com/3pmsanji/ 
 

ナビゲーター

(左)小室 慶介/(中央)こまつあかり/(右)河野 竜二

こまつあかり
岩手県出身、鎌倉在住。
ナローキャスター/ローカルコーディネーター
地域のなかにあるあらゆる声を必要な人に伝え、多様なチカラを重ね合わせながら、居心地の良い「ことづくり」をしている。
Instagram @komatsu.akari
@kamakura_coworking_house @fukasawa.ichibi @moshikama.fm828 @shigototen
湘南WorK.の冠番組である鎌倉FM「湘南LIFE&WORK」のパーソナリティを務め「湘南での豊かな暮らしと働き方」をテーマに発信。多様性を大切にした働き方、それが当たり前の社会になること。その実現へ向けて共創中。

小室 慶介(こむろ けいすけ) 
湘南鵠沼育ち、現在は辻堂在住(辻堂海浜公園の近く)。
長く東京へ通勤するスタイルでサラリーマンを経験。大手スポーツ関連サービス企業にて、事業戦略を中心に異業種とのアライアンススキーム構築を重ねるものの「通勤電車って時間の無駄だよな」という想いがある日爆発し、35歳で独立。幼い頃から「自分のスタイルを持った湘南の大人たち」に触れて育った影響か、自分自身で人生をグリップするしなやかな生き方・働き方を模索し始め「湘南WorK.」を立ち上げる。相談者が大切にしていることを引き出しながら、妥協のないお仕事探しに伴走するキャリアコンサルタント。

河野 竜二(こうの りゅうじ) 
神奈川県出身、湘南在住。
教育業界10年間のキャリアで約2,000人の就職支援に関わり、独立。キャリアコンサルタントとして活動する。それと同時に、”大人のヨリミチ提案”がコンセプトの企画団体「LIFE DESIGN VILLAGE」のプロデュースや、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局など多岐にわたって活動する。湘南が誇るパラレルワーカー。

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