【鎌倉FM 第19回】EQ(感情知性)が教えてくれる、自分にとっての幸せの指標

今回のゲストは、株式会社アイズプラス代表取締役社長の池照佳代(いけてるかよ)さん。人材開発のスペシャリストとして数々の企業で人事コンサルタントを務めてきた池照さんは、数年前に鎌倉へ移住。今年新たに、心豊かに働くための個人向けサポートを始めました。池照さんにいったいどんな心境の変化があったのでしょうか? そして生き方に大きく関係する「EQ(感情知性)」とは? お話を伺いました。

目次

1人1人が主語にならない「人事制度」に疑問

池照さん

学生時代をアメリカで過ごし、帰国した6月に就職活動をすることになったんです。日本の会社って、そんな中途半端な時期に新卒を採らないんですよね。なかなか就職させてもらえず、拾ってくださったECCさんで1年間英語の先生をしながら、その間にスキルを付けようと思って秘書検定やワープロ検定の講座を全部受けて。そこからやっと就職させてもらえて、最初の会社がアメリカの食品会社。そこで配属されたのが人事だったので、そこからずーっと人事の仕事をして、今も人事関連です(笑)

河野

おおー!

池照さん

たぶんそこで経理だったら3日でクビ(笑)

小松

そこからずっと人事畑なんですね!

池照さん

私にとって、本気で仕事をする人が集まる会社は素晴らしい場所で、そこで仕組みをつくったり、制度をつくったりするのがすごく好きだったんです。でも、ずっと仕組みをつくって来てだんだん自分も成長してくると、今度は「あれ? 制度だけじゃなかなか1人1人に向かっていないな…。制度やしくみづくりは女性に対して、とか、管理職に対して、というのはあるんだけど、1人1人が主語にはならない」そんな違和感を感じながらも、その時は言語化できなかったんです。

子どもが3歳になった頃、大学院に進学しました。大好きな「会社」を、人々がもっと成果を出せる場にしたいと思い、MBA(経営学修士)を学びに行ったんです。

感情がプロジェクトの成果を左右する?

池照さん

大学院修了後は、子育てと両立しながら会社員継続が難しいと感じ、独立しました。いろいろな会社にプロジェクトベースで関わることになったわけですが、例えばA社とB社、同じようなテーマで私がプロジェクトリーダーとして関わらせていただいた時に、A社はすごくうまく行くのに、B社はうまく行かないということが出てきたんです。当時の私は、それが悩みだったんですね。

うまく行かないB社の人たちを、なんとか良い流れに乗せて、プロジェクトを成功させるにはどうしたらいいんだろう? そんな時に、たまたま本屋で見つけたのが「EQ(感情知性)」の本だったんです。ずいぶんと前に「EQ」というものが世の中にあることは知っていて、一旦その本を手に取ったんだけど…その時は3ページで寝ちゃったんですよね(笑)

小松

響かなかったんですね(笑)、その当時は!

池照さん

「難しいな〜」と思って(笑)。でも、独立して自分が課題を抱えた時に、もう一度出会ったんです。思わず手に取って読んだら「あ、これかも!」って肌感覚でピンと来た。もしかしたら、この感情を知性として使うことや人の感情に着目するということを、リーダーが発揮しているかいないかで、プロジェクトの成功に大きな差が出るのかなと。

それで本を読んで、翌日、著者の方の会社に「EQを勉強したい」って電話したんです。そこからトレーナーになって十数年経ちました。

自分の感情や思考をマネジメントして状況を動かす力「EQ」

池照さん

EQ(感情知性/Emotional Intelligence Quotient)は、「自分の感情や思考をマネジメントして、成果に向けて動かす力」です。

感情があること自体、日々私たちが暮らしている中では気にしないですよね。「あ、私は今こういう感情だわ」なんて、いちいち立ち止まって気にしないでしょ? 意識してそういう時間を1日の中で持つとか、「私は今日はすごく嬉しい。なぜならばこうやって人と会えるからだ」とか、何をしたら自分がハッピーになるのか、自分は気持ちが上がるのか、いちばん機嫌が良い状態になるのかを知っておくことは、自分の人生を豊かにするために、とても大切だと思うんです。

EQの良い所の一つは、感情は誰もが持っているものだということ。赤ちゃんでも持っているし、病気じゃない限り死ぬまで私たちに備わっている。あともう一つは、育てられるということ。EQは開発ができると言われているものなので、年齢にかかわらず訓練によってずっと高められる。おじいちゃんでもおばあちゃんでも、もちろん幼稚園の子でもやっています。常にそれに気づけばできる。それを聞いたときに私は「これは素晴らしい!」と思い、勉強し始めたんです。

独立14年目の新たなチャレンジ

小室

今年いろんなチャレンジを始めたということで。

池照さん

今まで「B to B(企業向けサービス)」が主体でしたが、「B to C(個人向けサービス)」も広げてチャレンジをしている途中です。去年までやっていたコンサルティングの仕事は一旦全部やめたんですよ。

河野

ええ?! 全部やめたんですか?

池照さん

はい、自分たちの強みであるEQ、そして「心豊かに働く」コンセプトに集中しようと。昨年までは出張も多く、鎌倉に会社があるのにほとんど鎌倉にいなかった私自身の働き方や仕事との向き合い方を一度見直したいと思ったのも一つの理由です。「挑戦したいね」と言いながら、なかなか準備が進まないことがたくさんあったので、どこかで区切りをつけたいと思っていたんです。

今までに培った企業向けにリーダーシップの開発や、マネージャー研修、役員の方へのワークショップみたいなものに加え、今年はEQを一般の方にも伝えて、EQによってもっと人生を豊かにする、心豊かに働くことを一緒に考えるサービスを提供していきます。これが、私たちの今年のチャレンジです。

どうしたら自分がハッピーでいられるのかを知ることが豊かさの入口

小室

コロナの影響を一つの節目とした時に、企業も個人も働き方などいろいろ変化があったと思うんですが、いかがですか?

池照さん

私も去年までは週4で東京へ往復2時間半かけて通っていたんですが、このコロナと、自分の軸を少し転換させたことによって、今は週1回行くか行かないか。ずーっと鎌倉にいて仕事をしています。物理的にはそこが大きな転換点なのと、私の周りのクライアントさんもほぼ全てがオンラインになりました。だいぶ生活の仕方が変わりましたよね。

小室

湘南WorK.に転職やお仕事紹介の問い合わせをしてくる人は、コロナになって最初グッと増えた。その後一度引いて、今回の外出自粛が明けて会社から通勤を求められた時に「あれっ?! これちょっとおかしいな、元には戻りたくないな」って人が、今また問い合わせをしてきている状況なんです。

池照さん

みんな、自分自身や大切にしている家族を軸にした生活と働き方を一度体験してしまったら、戻りたいとは思っていないということですよね。

小室

そうだと思います。

池照さん

私自身も今の方が明らかに心身ともに健康でいることを味わっています。

小松

働き方や働く場所に縛られなくて良い時代だからこそ、自分にとって最適なそれを選ぶために必要なのは、やはりEQなのかもしれない。今、自分を改めて紐解いて見つめ直すことで、どこで生きることを叶えていくのか。ちょうどその時期なのかもしれない。

池照さん

私自身が主観的にハッピーでいられる場所はどこなのか? どんな時間を過ごすのか? 誰といて、どういう働き方をしたら心豊かなのか? これが自分で分かると人生の質が向上します。EQは自分自身の主観を育て、自分を強くし続けるライフスキルですから。

*収録・撮影:鎌倉・旅する仕事場 西口ラウンジ(協力:株式会社ANTz)

今回のゲスト

池照佳代(いけてるかよ)さん

鎌倉市在住。英会話学校での講師・学校運営を1年経験し、1992年から2005年まで外資系含む大手企業数社にて一貫して人事を担当。2006年に独立し有限会社アイズプラス(現・株式会社アイズプラス)を設立。企業の人事・経営企画業務支援を中心に、人事制度(評価、報酬、教育、組織)設計、社内外コミュニケーションデザインの構築と実行、コーチング、EQ開発、マネジメント研修設計・講師業務等を担当。外資系・国内企業双方の経験を生かしたタレントマネジメント(人材・組織開発)やサクセッションプラン(経営幹部の選抜や育成、後継者育成)には特にオーダーが多く、リピート多数。認定NPO法人キーパーソン21の理事、NPOインディペンデントコントラクター協会理事をを務め、キャリア教育や多様な働き方のプロジェクト推進や啓蒙活動を行っている。2017年からは仕事の拠点も鎌倉に移し、企業だけでなく個人を対象としたEQ(感情知性)の開発プログラムを通じて、全ての人が「心豊かに働く」ことを目指して活動している。EQトレーナー/プロファイラー(EQGA公認)、国際認定資格EQACアセッサー。

▼株式会社アイズプラス

https://is-plus.jp/

▼アイズプラスのEQサービス

https://is-plus.jp/eq-service

▼感情知性EQを知り、活かし、心豊かにポジティブチェンジを起こすヒトのための日本初のEQオウンドメディア「EQ+LAB.」

https://is-pluseq.com/

ナビゲーター

(左)小室 慶介/(中央)こまつあかり/(右)河野 竜二

こまつあかり
岩手県出身、鎌倉在住。
ナローキャスター/ローカルコーディネーター
地域のなかにあるあらゆる声を必要な人に伝え、多様なチカラを重ね合わせながら、居心地の良い「ことづくり」をしている。
Instagram @komatsu.akari
@kamakura_coworking_house @fukasawa.ichibi @moshikama.fm828 @shigototen
湘南WorK.の冠番組である鎌倉FM「湘南LIFE&WORK」のパーソナリティを務め「湘南での豊かな暮らしと働き方」をテーマに発信。多様性を大切にした働き方、それが当たり前の社会になること。その実現へ向けて共創中。

小室 慶介(こむろ けいすけ) 
湘南鵠沼育ち、現在は辻堂在住(辻堂海浜公園の近く)。
長く東京へ通勤するスタイルでサラリーマンを経験。大手スポーツ関連サービス企業にて、事業戦略を中心に異業種とのアライアンススキーム構築を重ねるものの「通勤電車って時間の無駄だよな」という想いがある日爆発し、35歳で独立。幼い頃から「自分のスタイルを持った湘南の大人たち」に触れて育った影響か、自分自身で人生をグリップするしなやかな生き方・働き方を模索し始め「湘南WorK.」を立ち上げる。相談者が大切にしていることを引き出しながら、妥協のないお仕事探しに伴走するキャリアコンサルタント。

河野 竜二(こうの りゅうじ) 
神奈川県出身、湘南在住。
教育業界10年間のキャリアで約2,000人の就職支援に関わり、独立。キャリアコンサルタントとして活動する。それと同時に、”大人のヨリミチ提案”がコンセプトの企画団体「LIFE DESIGN VILLAGE」のプロデュースや、日本最大級の環境イベント「アースデイ東京」の事務局など多岐にわたって活動する。湘南が誇るパラレルワーカー。

この記事を書いた人

文筆家。2007年~2018年まで鎌倉に暮らし、湘南エリアの人々と広く交流。
現在は軽井沢に住み、新しい働き方・暮らし方を自ら探求しつつ、サステナビリティやウェルビーイングの分野を中心に執筆活動を行っている。

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