今回のゲストは、「コノマチカラー」代表の宮部誠二郎さんです。2019年4月にフリーランスに転身し、ローカルコンテンツメイカー「コノマチカラー」を鎌倉で設立。早くも地方創生やローカルメディアなど多方面で活躍されています。大手企業に勤めていた宮部さんが、なぜあえてフリーランスへ転身したのか。そして、働き方を自然に変えることができたその秘訣とは?
この街ならではの色合いを力に
コノマチカラーはどんなことをしているのか、教えていただけますか?
また良いネーミングっすねぇ! センスが良いんだな、いつも。
コノマチカラーは、2019年4月から独立して自分の屋号として始めたもので、仕事の軸として、地域と街を拠点にしたその街その街の「色合い」を出していくお手伝いをしていきたいという思いがあります。あと「この街の力」みたいな意味もあって。
ああ、そうか! 「カラー」と「力」。
さらに「この街から発信する」という意味も込めて。そんな3つの意味を重ねて、欲張って名づけました。そういう軸でやっているので、何かしら地域のコンテンツや地域のプレイヤーをつなげていくような仕事をしていきたい。地域のパンフレットやチラシなどの制作物も作ったり、湘南エリアの雑誌の取材のディレクションをやらせてもらったり、鎌倉の企業とパートナーにならせてもらったり、いろいろ欲張りながら活動しています。
今年4月からということは、それ以前はどこかにお勤めされてたんですか?
そうですね、今もお付き合いがあるんですが、「LIFULL」という会社に新卒で入社してからずっと勤めていました。30歳くらいになったら独立したいという思いがあったんですが、2年ほど遅くなっちゃいましたけど、やはり自分の好きな街に絡む仕事でやっていこうって。というのも、学生の時から「フリーペーパー KAMAKURA」というメディアを始めて、街の人たちに出会うのがめちゃくちゃ楽しくなって、こんなに素敵な人たちがたくさんいる街に関われるのは幸せだなという思いがあったので、そこからはまって大学院まで行って、「地域愛はどうやって形成されるのか?」という研究をしていたんです。そこから何かそういう仕事に携われる所はないかと探していたら、LIFULLという会社に出会えました。すぐ辞めて自分で何かやろうかなという考えもあったんですけど、意外に一途な性格で、やはり入社してしまうとそこから仕事も楽しくなり、結局は8年くらい、しかもずっと同じマーケットでやっていました。
何か「ここで独立しよう!」みたいなきっかけはあったんですか?
そうですね、たまたま社長と話すタイミングなどもうまく合い、「お前どうするんだ? 何やりたいんだ?」みたいな話になって、「やっぱり地域をやりたいですね」という話をしたら、「じゃあうちの地域創生課に異動するか」「はい!」となったんです。でもLIFULL以外でもチャレンジしてみたく、副業をと考えたのですが、たまたま会社の制度にはまらなかったので退職しました。そのまま今も、LIFULLともお付き合いをしています。
今まで培った関係性を足場に、地域で仕事をつくる
実際、いざフリーとなった時、ギャップはなかったですか?
ギャップはどうかな? 僕はLIFULL在職中の最後の方は、ウェブの広告代理店業みたいなことをやっていて、それぞれお客さんの違うプロジェクトを10個くらい回していく、というのが仕事のスタイルだったので、感覚としては今と変わらないんです。プラスになった点は、いろんな企業文化をその中に入って見れるというのが勉強になっていて、そこの内情も知りつつ、街をもっと楽しくしていくためのいろんなサービスに携われるというのが面白いなと思います。
独立して何も無い状態から仕事をするというのは、難しいじゃないですか。やはりそれまでに蓄積してきた関係性があるからこそ、やれているという所はあるんですよね?
そうですね、それで言うと今、 全部つながって来ています。
今後はクライアントビジネスだけでなく、自分で事業を起こしていくみたいなこともあったりするんですか?
今の仕事柄、いろんな地域のプレイヤーと出会えるようになってきたので、やはり僕の最終目標は、そこの地域プレイヤーがどんどん地域内に増えていって、その地域ならではのコンテンツがいっぱい生まれてくるようにすること。そうすると自分自身が旅していて楽しいじゃないですか。そのために必要な事業であれば起こしていきたいなと考えています。
なるほど!
大事なのは自分が何をしたいか、そのための働き方を選ぶ
僕もフリーになってから思ったんですが、もう1つの会社の中だけにいる必要が無いなと感じてきています。
これまでLIFULLの中でずっとやっていて、今は外で仕事をするようになり、1社の中だけにいた時よりもパートナー企業やクライアントに対してよりエッジの効いた提案ができるようになる、みたいなことはあり得ますよね。外部を経験しているとか、外部のネットワークがあるから、企業に対して強い提案ができるというのは絶対にあると思う。
8年間サラリーマンを1社でやって、やるべきことや、やりたいことがちゃんと見えてきて、それを8年間の中でずっと温めてきたからこそ、今できているというケースかなと思います。
温めていた感覚、あります?
そうですね、温めている時は気づかなかったのかなと思いますけど、ちょっと芽が出た時に「ああそうだ、やっぱりこっちだった」って気がついて、ポンと動いた感じでしたね。正直、綿密に計画を立てていたわけではなかったですけど、自然にこうなったかなという感覚です。
僕、気づいたんですけど、たぶん宮部さん的にはあまり変わらないんだと思います。サラリーマンだから、とか、フリーランスだからってことで、大きく変わっていないような気がする。在り方というか、自分自身の「こう在る」というのがあれば、働き方は別に関係ないというか。
そう、フリーランスでイキイキと働いている人の共通点は、そういう所なのかなと思います。
だから「自由になりたいからフリーになりたい!」っていう人は、もしかしたらうまく行かないかもしれない。
そうだね。
宮部さんはそういうことを求めてフリーランスをしているわけではない、というのかな?
そう思います。僕もフリーになりたかったわけじゃないし、起業したかったわけでもない。それって「結婚したいから相手を探す」みたいなことと似てますよね。じゃなくて、どこで誰と何をやりたいのか、みたいな所が大事で、その結果、世の中の制度としてフリーにならざるを得なかったという感じです。
そうですよね。だから別にフリーになることが目的ではなくて、自分がやりたいこと、目指したいことがあって、その目的を達成するためにフリーという道に入っていったということなんですよね。そこをやはりしっかり考えておかないと、フリーで働くというのは逆にマイナスになっちゃうこともある。自分が何をしたいか、何を目指すのかを自分自身でしっかりと考えておく必要があるなぁとお話を聞いていて思いました。
今回のゲスト
宮部誠二郎(みやべせいじろう)さん
鎌倉の小町に育つ。大学時代は仲間と企画・制作団体 chameleonを結成し、鎌倉のローカル情報を取材・編集した「フリーパーパーKAMAKURA」を発刊。大手不動産企業 株式会社LIFULLに8年間勤めた後、2019年4月に独立しローカルコンテンツメイカー「コノマチカラー」を立ち上げる。地域に根差したコンテンツをつくり、つないでいくことで、その地域独特の個性とプレイヤーの創出を目指す。