今回のゲストは、鎌倉在住のプロサーファーであり、フィルマーでもある和光大さん。プロサーファーを目指し15才でオーストラリアへ渡り、帰国後、20才でプロデビュー。夢を叶えた和光さんを待ち構えていた苦悩とは? そして、その先に見えてきた原点と新たな希望とは? お話を伺いました。
中1でプロサーファーを志し、15才で単身渡豪
もともと僕は横浜出身で、小6の時に鎌倉へ引っ越してきて、それからずっと鎌倉なんです。
その時からもうサーフィンを?
そうですね、サーフィンのために引っ越してきたという部分があるので。家族で。
そうなんだ。じゃあ、横浜にいた時からサーフィンに通っていたんですか?
そうです。小4の夏にサーフィンを始めて、小5から本格的にサーフィンにのめり込んで。最初は「のめり込んだ」というよりは、父にやらされていたんですけど(笑)。
小さい頃からプロサーファーを目指していたんですか?
小5って、確か10才とかじゃないですか。だから「2分の1成人式」みたいな催しが学校であって、10年後の自分に手紙を書く機会があったんです。それをカプセルに入れて埋めるという行事。その手紙に「10年後の自分はプロサーファーになってますか?」って書いてました(笑)
おおー!
鎌倉の中学に進学してすぐ、高校どうするんだ?という話になり、そこから、今後どうしていきたいんだ?って話になって。その時にはもう確実に自分の意志で「サーフィンしたいし、プロサーファーになりたい。世界で活躍できる選手になりたい!」と。じゃあオーストラリアに留学したらいいんじゃないか、という話が中1の時に出ていました。その時も両親が選択肢を与えてくれました。
20才でプロへ。優勝からの負のループ
プロになったという地点は、何才の頃なんですか?
20才ですね。15才からオーストラリアに留学して、20才の年の3月に帰ってきて、4月にプロテストを受けて、プロになりました。
好きで、趣味でサーフィンで海に入るのと、それを仕事としてやっていくというのはまたちょっと違うような気がするんですが、何かギャップみたいなものはあったんですか?
ギャップはありましたね。10代の時は、もうがむしゃらにサーフィンをやって、海外でもやって、20才の時に帰ってきてプロになって、その年に全国ツアーで優勝したんです。まだ若かったので天狗になっちゃった。結果、逆に資金繰りがすごく苦しくなって、アルバイトしながらどうにか2年目もプロツアーを回って。
2年目まではまぁ良かったんですが、やはりアルバイトをしちゃうとその土地に根付いてしまうというか、いなくちゃいけない。でないと生活を回せないという感じになってしまって、3年目からガクッと成績も全部下がっちゃって、来週の生活費を稼ぐために大会で何番までに入らないと…みたいな(笑)。もう全部がうまくいかなくて、やること全て逆方向に行っちゃうんですよね。
そんな時期が1年あり、それがきっかけで自分のことをすごく考えるようになりました。「何がしたいんだろうな、自分。試合に出たいのか、勝ちたいのか、何したいんだろう?」と考えたら、純粋に「サーフィンがしたい!」っていうのが出てきて。じゃあ、もうこの環境から脱出するしかないと、その時のスポンサーもアルバイトも全部辞めてオーストラリアに戻ったんですよ。それが今思うと、現在の活動に至るターニングポイントでしたね。
「今、何がしたい?」直感に従って原点へ
1回ゼロベースに戻った、という感じですよね。
そうですね。オーストラリアは自分のサーフィンのルーツでもあるし、初心に戻るというか、やはり自分のルーツを見に戻って、とにかく好きなだけサーフィンして上手くなって、その先で自分が何を思うかで決めよう、とにかく「今自分が何をしたいか」を求めようと思って。
ただ、サーフィンをするつもりで行ったけれど、「何か得よう、何か得られたら帰ってこよう」とも思っていて。自分のやりたいことをがむしゃらにやった後、「世界を見たい」というのがスッと出てきたんです。それまで僕は全てサーフィンを軸に考えすぎちゃったから何も知らない、世界を見たい、じゃあ世界一周か!みたいな(笑)
大くんは常に自然と向き合って、海と対峙しているから、自然の原理というか、サーフィンをやり続けたからこそ思考がすごくシンプルで、直感や感覚を大事にして突き進んでいく行動力につながっているような気がする。例えば都内で情報の波に揉まれながら働いていると、いろんな判断材料がありすぎて思考が停止してしまったり、言い訳を探したりしがちかもしれない。そういう意味でも、やはりサーフィンが根っこにあるんだろうなと思うんですよね。
世界一周の旅を映像化
大くんが制作したドキュメンタリー・フィルム「Breath In The Moment」の話で、ちょうどこれから上映会もしようという予定だったんですよね。(※当初4/12に上映会を開催する予定だったが、新型コロナウィルスの影響下で延期を決定)
その映画をつくろうと思ったきっかけが世界一周だったんですよ。ずっとサーファーをやっていて社会経験ゼロだし、やり方なんか分からないけど、とりあえず企画書をつくって、それを持って営業をして、2019年の11月の終わりに旅に出ることができたんです。その1ヵ月の旅の映像まとめたものが、今度上映しようと思っているフィルムです。
作品はもう完成してるんですか?
いえ、絶賛編集中です(笑)。やはり僕は、つくるにも自分の中で伝えたいことが決まってからじゃないと伝えられない。それを考えている期間に、本当にうれしいことにサーフィン雑誌の『Blue. 』で記事を書かせてもらったりする機会に恵まれて。
何ページでしたっけ? 10ページくらい?
15ページです。
すごいねー!
記事を書かせてもらっているうちに、だんだんと自分の思っていることが分かってきて。
文字に起こすと意識もはっきりしますよね。まさか、世界一周するぞと思った時点では、『Blue.』の中に自分の言葉が並ぶなんて想像してなかったわけですよね?
全然想像していなかったですね。
でも結果的にそこにつながったというのは喜びですよね。すごいことですよね!
なぜ映像制作なのか
動画やフィルムの世界にいなかった中で、ゼロからその知識を勉強して、今はお仕事として、というかワークスタイルとしても映像が選択肢として入ってきているわけですよね。
そうですね、例えば誰かからそういう仕事をもらえたらもちろん引き受けるし、やりたいんですけど、でもなぜ映像をつくっているかというと、自分の思っていることやシェアしたいことを形にできるのが映像ということであって、僕にとっていちばん重要なのはやはり「発信したい」ことなんだと最近気づいてきたんです。発信するための1つのツール、やり方として映像や写真があるんだと。
大くんの中で自分のいちばんの根っこだと思えるのは、やはりプロサーファーであることなんですか?
そこはやはり大きいですね。
「好き」を仕事にするために大切なこと
大くんにとって「働く」ということについて、どういう概念を持ってるのかお聞きしてみたい。今までにもいろんな働くことをされてきたと思うんですけど。
「サーフィンじゃ食えないよ」って言われてきたんですよ、ずっと僕も。他のスポーツと比べると稼げないと言われ続けて、10年やったら何とかまぁ生活できてるところまではいけたし、それをもとに考えると、好きなことで生活していくためには、やはりやり続けることが大切なのかなって。だから精神的には辛いなと思うことがあっても、自分のやりたいことだけはブレずに、それが仕事になるように、そのためにどう動くかを考えて生きていこうと思ってますね。
*収録:「The Sunrise Shack Japan」稲村ヶ崎店
*撮影:師岡龍也
今回のゲスト
和光大(わこうだい)さん
鎌倉市在住。プロサーファー、サーフコーチでありながら映像制作も行っている。幼少期からサーフィンを始め15才〜20才の時にプロサーファーを目指しオーストラリアへ留学。帰国後2012年、JPSA(日本プロサーフィン連盟)公認プロサーファーとなりALL JAPAN PROにて優勝を果たす。数年後、自己研鑽のためオーストラリアへ戻って新境地に至り、世界一周の旅へ。9カ国を回った記録を映像化しYouTubeにて発信している。2019年11月に仲間3人と1ヶ月間の新たな旅へ赴き、その映像を自ら編集したフィルム「Breath In The Moment」を制作、近日公開予定。
▼和光大 Instagram公式アカウント
@wonbat0828
▼和光大/世界一周サーフィン旅行記<モロッコ編>
https://youtu.be/VFo9dRDkjuY