【鎌倉FM 第81回】「自信」は育てられる「技術」であるとしたら?
ラジオ収録 前半
ラジオ収録 後半
& Column
「自信」は育てられる「技術」であるとしたら?
10年間の教員生活を経て独立し、学校をメインフィールドに組織変革の伴走を行っている大野大輔さんが今回のゲスト。学校に不適合を起こしていた自分自身の子ども時代の体験から、「学校を変えたい」と、あえて飛び込んだ教職の世界。そこで「誰も悪くない、悪いのは“仕組み”だった」という真実に行き着き、本業の傍ら副業として始めた現在の仕事が、今やご自身の看板であり生業となりました。
人や組織に良い変化を起こしていく上で鍵となるものの一つが、「自己効力感(Self-efficacy)」であると大野さんは言います。カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、「自分ならできる!」「きっとうまくいく」と、自分の可能性を信じられる力のことです。よく聞く似た言葉に「自己肯定感(Self-esteem)」がありますが、こちらが「何かができる・できないに関わらず、自分には価値がある」というBeing(存在)の肯定であるのに対し、「自己効力感」は、特定の課題を「自分はやり遂げる力がある」と具体的に確信している、Doing (行動)への自信のこと。Beingが土台であり、Doingはその上に立つ柱であるから、自己肯定感がなければ自己効力感も育ちにくいという説もありますが、そんなことはありません。この二つは密接に関わり合っており、双方向で働きます。いきなりBeingの肯定、つまり自分のありのままを認め、許し、好きになれと言われても難しい時は、特定の事柄、小さな「できる」「できた!」の体験を積み重ねて「自己効力感」の方を先に育てることで一定の自信がつき、事態を好転させる最初の歯車を回すことができるのです。
安定した収入、慣れた人間関係…幸せや充実感を感じていいはずなのに、心はどこか冷めている。やりたいことはそれなりに浮かぶけれど、「失敗したら?」「自分には無理」という頭の声が聞こえて一歩を踏み出せない。もし、あなたがこのような状態に心当たりがあるのなら、それはいつの間にか染み付いてしまった「学習性無力感(何をしても状況を変えられないというあきらめの境地)」かもしれません。転職や起業、成功ノウハウの情報がこれだけ溢れている時代に動くことができないのは、「やり方を知らない」からではなく「自分にはできない」と感じてしまっているから。例えば思うように評価されない状況や、環境に不満がある状態が長く続くと「自己効力感」は次第に削られ、本来持っていた能力さえも信じられなくなっていくそうです。現代は多くの人が、経済的不安とコントロール不能感から、この状態に陥っているのではないでしょうか。
そのような無力感に囚われた状態から脱出していくシンプルな方法があります。一つは、小さな「自分で決める・自分でやり遂げる」体験を重ねること。朝起きて何を飲むか、みたいな、ささやかな決断の一つ一つを自己責任の下に行っていくことや、通勤時間に5分の英会話リスニングを一週間続けるといった、自分の努力だけで遂行可能な行動をできるだけ低い目標で実行し続けることで、自己効力感の基礎が築かれていきます。
もう一つは、自分の境遇と似た人が成功している様子を見ること。雲の上の成功者ではなく、自分と同じように迷い悩みながらも一歩を踏み出した身近な人の話を聞いたり読んだりすることで、「あの人にできるなら、私にもできるかも」という健全なモデリング効果を得ることができます。批判的な環境とは距離を置き、肯定的なコミュニティに入ったり、信頼できるキャリアコンサルタントに相談したりして、「君にもできるよ」というポジティブな励ましをもらうことで、その効果はより強力になるそうです。
「自信」は“つく”のを待つものではなく、小さな行動で“育てる”もの。本当の「安定」とは、組織に依存することではなく、「どこへ行っても自分ならなんとかできる(自己効力感)」という確信を持つことです。大野さんも実践したように、副業や発信などリスクのない範囲で「自分の力が通用した」という体験を積むことが、その力を育てます。その先に、大野さんの言葉を借りるなら「まるで見たかった映画を見ているような」人生が、展開し始めるのかもしれません。
(角 舞子)
今回のゲスト

大野 大輔(おおの だいすけ)さん
組織開発コンサルタント/研修デザイナー
1991年生まれ。
東京の公立小学校で10年間勤務後、2023年より株式会社先生の幸せ研究所に所属。
全国の学校・園での研修や伴走支援に尽力。
鎌倉市学習者中心の学び推進参与、立命館宇治中高運営指導委員などを兼務し、企業や地域とも連携。
2024年には初の著書『研修リデザイン』(教育開発研究所)を出版。
Podcast「ほぼ教育最前線」では教育や子育てをテーマに多彩なゲストと対話を重ねている。
「今日が楽しく、明日が待たれる学校」であふれる社会づくりを目指す。




