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& Column
新しい時代の「働く」の前提とは?
「“働く”とは、ただ、働くだけのこと。自分の人生の一つの活動、一つの時間にすぎないし、そんなに大したことじゃない」
25歳の岸本直樹さん(TEFUDA代表/デザイナー)のこの在り方から、時代が完全に変わった、ということを感じずにはいられません。透明だから染まらず、柔軟だから折れない。軽くニュートラルであることの、柳に風の無敵ぶりがなんとも清々しい。今まで私たちは、仕事に使命感やアイデンティティ、自己の存在意義、勝負といった、あまりに重すぎる何かを不必要にくっつけていたのかもしれません。もはやそれらは完全に「気のせいだった」という気がします。
昭和の敗戦後、次は経済における戦争に勝つためにつくり上げられた、優良規格の人間を量産するための社会システム。経済成長時代はとっくに終わったにも関わらず、最近まで続けられてきたヒエラルキー型のその強力な仕組みは、フリーでフラットな新しい時代へと急速に移行する中、至る所で不適合を起こし崩壊しつつあります。日本のGDPが世界4位に転落したとのニュースが取り上げられていますが、その物差しが幸せや豊かさの実感指数でないことはすでに多くの人々の知る所となりました。
まず私たち誰もが「生きることを楽しむ」生来の権利があり、仕事はしてもいいし、しなくてもいい。しかし仕事をすることで得られるものや実現できることがあるから仕事をする。どんな仕事をしたいかの前に、どんなふうに生きたいか。どんな会社で働くかより、誰とどう働くか。共感や感覚でつながり、自分のできることと人のできることを組み合わせて、誰かを助けたり、社会の役に立っていく。ストレスを感じるなら、自分か、環境か、やり方をチューニングして、より良く心地よい状態へ整えていく。頑張らず、感情に飲まれず、思考にも捉われずにただ在り、ただ働く。この軽やかさがこれからの「生きる・働く」の前提のようです。
そんなことで達成感や生きがいや成長や名誉は得られるのか? と前時代の怒号が聞こえてきそうですが、彼らは淡々と見えて1日とて同じではない日々の微細な進化や変化を、その精妙なバイブスで大きな喜びと共にたっぷりと感じることができるように、すでにデザインされた新しい人間なのだと思います。これまでの何かを否定することも、排除することも、諦めることもなく、身の周りにこぼれた課題を優しく掬い上げ、芯を外さずしなやかにクリエイティブな一打を打ち込む。新しい時代のリーダーとは、そんな姿をしているのかもしれません。
岸本さんに比べて、私は重たい。そう感じたなら、生き方や仕事を掘り下げる前に、ニュートラルポジションを目指してまずはどんどん外していきましょう。いつの間にかガッチリ背負ってしまった、無駄な鎧や武器や十字架の数々を。(森田マイコ)
今回のゲスト
岸本 直樹(きしもと なおき)さん
TEFUDA代表/デザイナー
1998年、東京都青梅市生まれ。
鎌倉市在住。
青山学院大学経済学部卒業後、映像制作の太陽企画株式会社へ就職。
その後株式会社TranSeを経て、2022年1月よりフリーのクリエイティブディレクターとしての活動を開始。
サーフィンライフを満喫しながら、現在はクリエイターチームTEFUDAの代表として、ブランディングや経営支援を行う。